第109回 社員に「辞めない理由」を見出してもらうために

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第109回 社員に「辞めない理由」を見出してもらうために

安田
昔に比べて「会社を辞めること」のハードルがかなり下がっていると思いませんか?

鈴木
あぁ、確かに。特に若い人ほどサッと辞めてしまうイメージです。
安田
そうそう。しかもなんというか、「給料が安い」とか「休みが少ない」とか「転勤がある」とか、そういう具体的な理由がないのに辞めちゃう人が増えたなと思うんですよ。

鈴木
理由がないのに辞める? なぜ辞めるんです?
安田
私もいまいちピンとは来てないんですけど、「この会社にいる理由」がなくなると辞めちゃうというか。逆に経営者側から見ると、社員を引き止めておきたいのであれば「この会社を辞めない理由」を明確にする必要があるのかなと。

鈴木
あ〜なるほど。なんとなく仰ることはわかる気がします。それってある意味結婚と同じじゃないですか?(笑) 「一緒にいる理由」がなくなったら離婚されちゃうみたいな。
安田
確かにそうかも(笑)。最近はますます熟年離婚が増えているって話も聞きますもんね。社員の雇用も結婚生活も、「一緒にいる理由」を提示し続けないと維持できないと。

鈴木
なかなか厳しい時代ですね(笑)。ともあれ、要するにそういうのって「人間関係」の話なんですよね。会社も結婚も人間の感情が交差するものなわけで、いくら月給が高い会社だろうが、いくら高給取りの旦那だろうが、気持ちの面で折れてしまえばやっぱり続かない。
安田
仰るとおりですね。自分が大切にしてもらえているかとか、逆に自分は必要とされているんだとか、そういう気持ちが「そこに居続ける理由」になるんでしょう。

鈴木
そうそう。人間はやっぱり感情の生き物ですから。
安田
そうですね。ただ難しいのは、会社が残ってほしいと思う人材って、要するに「替えがきかない人材」じゃないですか。そういう人ばかりになってしまうのも実はリスクなんですよね。

鈴木
どんどん属人化していきますからね。その人に何かあった場合にすごく困る。そういう意味では誰でも替えがきくようにしたいけど…。
安田
でもそうすると「このポジションは、自分じゃなくて誰でもいいのか」と、モチベーションが下がってしまい、結果として離職されてしまうと。最近は転職のハードルも下がっているし、転職したら給料がアップする可能性も高いわけで、ますます「その会社に居続ける理由」はなくなっていくんですよ。

鈴木

いや〜難しいですね(笑)。どうしたらいいんやろうねぇ。

安田
先ほど結婚の話が出ましたけど、夫婦関係で言えば「お互いの要求」があらかじめ明確になっている方が長続きする気はしますね。要求と言うか、価値観のすり合わせを先にしておくというか。

鈴木
ああ、確かにそうですよね。「ここはどうしても譲れない」ってことを、お互いに話し合っておくわけですね。…そういえば僕は子どもたちに「結婚する前には絶対同棲をしておけよ」と言っていました。同棲すれば嫌でも相手の価値観が見えるから、と(笑)。
安田
なるほどなるほど(笑)。ちなみにそれは娘さんにも言っていたんですか?

鈴木
もちろん。結婚してから後悔するよりは、先に嫌な部分もちゃんと見ておいた方がいいと(笑)。
安田
そうなんですね(笑)。でも結婚前に嫌な部分を見ちゃって、それでもなお結婚したいなんていう人いますか? 誰も結婚しなくなっちゃいそうですけど(笑)。

鈴木
まあなんというか、許せるラインってあるじゃないですか。そこのすり合わせですよね。「これくらいなら大丈夫かな」をお互いに確かめるというか。で、これは就職だって同じだと思うんですよ。
安田
なるほどなるほど。インターンシップなどで実際の職場環境を感じてから、就職を決めるべきだと。

鈴木
そうそう。どういう価値観で動いている社員が多いのかを見つつ、自分のことも知ってもらう。そうやってお互いがわかりあえた状態で就職する方がいいと思いますけどね。
安田
なるほどなぁ。すごく納得感ある話ですけど、ちょっと空気を読めないことを言っていいですか?(笑) 私の知り合いに7年間同棲してから結婚して、1年で離婚した女性がいるんですよ(笑)。

鈴木
笑。まあ結婚したことに安心して、変わっちゃう人間もいますからね。特に男は(笑)。

 


対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

感想・著者への質問はこちらから