地元国立大学を卒業後、父から引き継いだのは演歌が流れ日本人形が飾られたケーキ屋。そんなお店をいったいどのようにしてメディア取材の殺到する人気店へと変貌させたのかーー。株式会社モンテドールの代表取締役兼オーナーパティシエ・スギタマサユキさんの半生とお菓子作りにかける情熱を、安田佳生が深掘りします。
第66回 鶏も魚もさばける、稀有なパティシエ

そういえば、スギタさんが包丁を使ってるところをあまり見たことないんですよ。フライパンを振ってる印象はあるんですけど。本格的なフレンチで修行されたと仰ってましたし、包丁さばきもプロ級なわけでしょう?

もちろんです。フレンチの現場で徹底的に仕込まれましたから。淡路島から魚が送られてきたら、仕込みの合間におろして骨を全部抜く。うずらが空輸で届いたら、それをさばく。修業時代はそういうことばかりやっていました(笑)。

あれは構造を理解するのが重要なんですよ。例えば「ここに包丁を入れたらモモが綺麗に切り分けられる」とか、「骨に沿ってそぎ切りすれば無駄に肉がつかない」とか、そういう知識さえあれば、割と簡単にできると思います。

できますけど、当時のシェフが「スライサーの方が早くて綺麗だ」という合理的な考え方の人だったので、あまりやってはいないですね。僕はペティナイフでリンゴの皮を綺麗にむいたり、キャベツを包丁でスライスしたりするのがかっこいいと思ってたんですけど(笑)。
対談している二人
スギタ マサユキ
株式会社モンテドール 代表取締役
1979年生まれ、広島県広島市出身。幼少期より「家業である洋菓子店を継ぐ!」と豪語していたが、一転して大学に進学することを決意。その後再び継ぐことを決め修行から戻って来るも、先代のケーキ屋を壊して新しくケーキ屋をつくってしまう。株式会社モンテドール代表取締役。現在は広島県広島市にて、洋菓子店「Harvest time 」、パン屋「sugita bakery」の二店舗を展開。オーナーパティシエとして、日々の製造や商品開発に奮闘中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。