少子高齢化である。
若くて優秀な人材を採用することは、容易ではない。
いや、若くなくても、優秀ではなくても、
人材を確保すること自体が困難なのである。
採用コストは高騰し、人件費はじわじわと上がり、
外食産業では利益を確保出来ない企業が急増している。
24時間営業も、行き届いたサービスも、
それを支える人材あってのビジネスモデルなのだ。
サービスを提供する人材が確保出来なければ、
あるいはその確保に収益以上のコストがかかるのならば、
もはやそのビジネスは継続不可能なのである。
これは外食に限ったことではない。
物流にしても、建設にしても、
現場は人手不足で疲弊し続けている。
人さえいれば、仕事は取って来られる。
売上も利益も確保出来る。
そんな経営スタイルは、もはや過去のものである。
では、採用力のない中小企業の経営者は、
この先一体、どのような手を打っていけばいいのだろうか。
少し立ち止まって、冷静に振り返ってみよう。
これまで、中小企業の経営者は、
何の苦もなく人を採り、利益を出し続けてきたのだろうか。
確かに、そういう時代もあった。
仕事は溢れ、募集すればいくらでも、
やる気のある若者が集まる時代。
まさしくそれは、高度成長時代だった。
だが、認めなくてはならない。
高度成長時代は終了したのである。
そして問題は、それだけではない。
実は高度成長時代の終盤には、
既に中小企業は苦悩を抱えていたのである。
それは、採用難という苦悩。
仕事はあるのに、人がいない。
私たちはかつて、そういう時代を経験している。
その時、経営者が払った代償は、莫大な採用費である。
かつて、水にお金を払う人がいなかったように、
採用にお金を払う中小企業経営者もいなかった。
だが、バブルの頃には、
求人広告にお金を払わざるを得なくなった。
採用にお金がかかる時代が、始まったのである。
今では、人材確保に求人費を払うことは、
中小企業経営者の常識である。
どんなに能天気な経営者でも、
何もしなければ人が採れないくらいのことは、自覚している。
だが、その常識は、もう古いのである。
「給料を払っているから、人は集まって当然」という時代から、
「求人広告を出さなければ、人が集まらない」時代に。
そして今は、求人広告を出しても、
人が集まらない時代なのである。
「広告費を払ったのに、なぜ応募者が来ない!」
と怒る経営者は、現状が理解できていない。
高額な求人費を払うことは、
確かに経営者にとっての苦悩である。
だがその苦悩は、時代遅れの苦悩なのだ。
これからは、まったく別の苦悩を引き受けなくてはならない。
それは、会社を変えていく、という苦悩。
求人費などかけなくても、働きたい人が集まって来る。
そういう会社に、作り変えなくてはならないのだ。
それは、単に求人費を払うより、遥かに大変な作業である。
だがその苦悩と引き換えに、
莫大な求人費という苦悩から解放される。
目の前にある苦悩を、別の苦悩に入れ替えるのだ。
この先、求人費を増やし続ける会社に、未来はない。
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