顧客を切る言葉

星野リゾートはスタッフ全員が
マスクをしないことを決めた。
もちろんスタッフが決めたわけではない。
会社が、つまり星野社長が、そう決めたのである。

3月13日以降マスクをするしないの判断は
個人に委ねられている。
つまり個人の自由なわけである。
だが星野リゾートのスタッフにはその自由がない。

「個人の自由なのに会社が強要するのはおかしい」
という意見もあり、ネットの反応は割れている。
「よくやってくれた」という反応もあれば、
「今まで常連だったがもう二度と行かない」
という反応もある。

さて、星野リゾートはこの後どうなっていくのだろうか。
取り組みが評価されて顧客がどっと押し寄せるかもしれないし、
感染を気にする高齢富裕層にはそっぽを向かれるかもしれない。
結果はわからないがこの経営判断は素晴らしいと思う。
なぜなら顧客の選別を明確に打ち出しているからである。

必マスクの人は絶対に行かないだろうし、
脱マスクの人は行きたいと思うだろう。
立場を明確にすることで顧客が選びやすくなったのである。
顧客だけではない。従業員にも辞める人が出てくるだろう。
一方でぜひ働きたいという人も現れる。

なぜ星野リゾートはこんな大胆なことが出来るのか。
それは彼らが元から顧客を選別しているからである。
万人受けを狙っていたら一泊十万円以上のホテルは作れない。
顧客を選ぶことで顧客からも選ばれる
win-winの関係を築いているのだ。

経営者が学ぶべきはマスクへの取り組みではなく、
顧客を選ぶスタンスである。
「全員が笑顔を見せることが最大のおもてなしです」
というメッセージ。ものは言いようである。
嫌なら来なくていいとは言わないが、
言っているに等しい。

この明確なスタンスが多くのファンを
生み出しているのだろう。
私は別に星野リゾートのファンではないが、
経営者としての判断は見事だと思う。
顧客を選ぶからこそ顧客にも選ばれる。
このルールを経営者は肝に刻むべきだ。

どんな人に顧客なって欲しいのか。
どんな人に顧客になって欲しくないのか。
まずここを明確にする。そして明確にしたラインを
社内スタッフにきっちり伝える。
我が社の顧客はここまでだと宣言するのだ。

もちろん社外にもはっきりこれを伝える。
あなたが私たちのお客様です。
あなたはお客様ではありません。
柔らかく、そして明確に顧客を切る言葉を発信する。
それこそがビジョンでありミッションなのである。

 

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