地元国立大学を卒業後、父から引き継いだのは演歌が流れ日本人形が飾られたケーキ屋。そんなお店をいったいどのようにしてメディア取材の殺到する人気店へと変貌させたのかーー。株式会社モンテドールの代表取締役兼オーナーパティシエ・スギタマサユキさんの半生とお菓子作りにかける情熱を、安田佳生が深掘りします。
第74回 「うまくいかない飲食店」に共通するものとは?」

我々経営者って、街を歩いていても他社の経営具合がつい気になってしまうじゃないですか。意識するとそればかり目に入るというカラーバス効果というのがありますけど、スギタさんも同業のお店が自然と目に入るんじゃないですか?

わかりやすいところでいうと、まずは「暗い店」ですよね。もちろん意図的な演出で暗くしているお店は別ですが、そうではなく単純に照度が足りていないのはNGです。薄暗いお店なんて行きたくないじゃないですか。

ああ〜、まさにそれです。僕がお店を始めたばかりの頃も、先輩経営者に「売上を上げたかったら、周りのどの店よりも照明を明るくしろ」とアドバイスされたことがありました。「ショーケースの明かりももっと明るくしろ」と。

へぇ! それはすごい。でも実際光の当て方一つで、商品の見え方もお店の印象もガラリと変わりますもんね。そして何より、アドバイスを素直に実行できるのが偉いですよ。多くの人は、助言を求めてくるくせに結局やらないですから。

確かに確かに。ただ個人的には、そっちばかりに興味がいくのも寂しいんですよね。例えば製菓の大きな展示会も、今までは有名シェフのデモンストレーションが一番人気だったのに、最近は「SNSでどう見せるか」みたいなレクチャーの方に人が集まるようになっていて。

そうそう。要するにいかに「お客さんの視点」を意識できているかなんだと思いますね。写真だけじゃなくて、たとえば従業員への態度でその店の将来性が見えたりもするじゃないですか。例えば先日も歯医者さんで、先生が歯科衛生士さんを患者の前で怒鳴りつけている場面に遭遇したんですけど。
対談している二人
スギタ マサユキ
株式会社モンテドール 代表取締役
1979年生まれ、広島県広島市出身。幼少期より「家業である洋菓子店を継ぐ!」と豪語していたが、一転して大学に進学することを決意。その後再び継ぐことを決め修行から戻って来るも、先代のケーキ屋を壊して新しくケーキ屋をつくってしまう。株式会社モンテドール代表取締役。現在は広島県広島市にて、洋菓子店「Harvest time 」、パン屋「sugita bakery」の二店舗を展開。オーナーパティシエとして、日々の製造や商品開発に奮闘中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。