第92回 人間は「能力の拡張」で、ここまで進化した

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第92回 人間は「能力の拡張」で、ここまで進化した

安田

藤原さんのメルマガにあった「全ての技術は、人間の能力を拡張する試みである」という一文を読んで、まさにその通りだなと。


藤原

ありがとうございます。実際、人類の歴史は「能力拡張の歴史」そのものなんですよね。例えば東京と大阪を昔は1週間かけて移動していたものが、今は新幹線で2時間半でいける。

安田

声を出して歌うしかなかったところに楽器が出てきたり、視力が落ちてきた人のために眼鏡が開発されたり。実際全ての技術は人の能力を拡張するためにあるんですよね。そう考えるとすごい気づきだなと。


藤原

僕自身、以前からそう思っていたというよりは、ある時ふと確信したんです。あらゆるテクノロジーは、人間の身体的な限界を超えるために生み出されてきたんだなと。最近話題のAIも、人間の思考力や創造力を拡張するための、最も新しいツールだと言えるでしょうし。

安田

確かになぁ。すごく腕のいい料理人でも、火力の強い調理器具とかよく切れる包丁とかがないと、いま食べられているような美味しいものは作れないわけですもんね。


藤原

そうですね。だから新しい技術は積極的に取り入れて、自分の能力を拡張していけばいいんですよ。

安田

人間って、他の動物と比べて肉体的には驚くほど弱いじゃないですか。牙も爪もないし、走るのも遅い。だからこそ人間は自らの身体を鍛えるのではなく、外部のツールを使って能力を拡張する道を選んだのかもしれませんね。


藤原

そうかもしれません。動物はそれぞれの身体機能を極限まで進化させてきましたが、人間はあえて「弱いベース」のままでいることを選んだ。だからこそ面白いんですよね。

安田

確かに。それでいうと、体を必要以上に鍛えるのは本来の人間の在り方とズレている気もしますね。それよりももっと外部で拡張していく方が人間らしいのかもしれない。


藤原

もちろん筋トレで見た目もかっこよくなりますし、気分もリフレッシュするので否定しませんけれど。単純に力をつけたいというだけなら、機械を使った方が早いし効果的ですよね。

安田

そうそう。どんなに筋肉をつけてもパワーショベルには勝てないわけで(笑)。


藤原

笑。新しいテクノロジーが出てくると、「そんなものに頼るべきではない」と否定的に捉える人もいますけど、むしろガンガン頼っていく方が人間らしいんだと思います。

安田

同感です。いずれにせよ進化したテクノロジーは元に戻りませんから。江戸時代の人の身体能力はすごかったと言われますけど、今はそもそもそんなに早く走る必要がないわけで。


藤原

火をおこす能力も獲物を狩る能力も、昔はないと生きていけなかったけど、今はそんなことないですからね。

安田

実際、必要ないものはできなくていいと思うんですよ。「最近の子どもは魚が切り身で泳いでると思ってる」なんて、嘆く声もありますけど、我々も電話がどういう仕組みかなんてわかってないですからね(笑)。


藤原

確かに(笑)。わからなくてもいいんですよね。使えていれば、自分の能力の一部になっているわけで。

安田

仰るとおりです。ピタゴラスの定理を再発見する必要がないのと同じで、先人が見つけた技術はありがたく使わせてもらって、次の拡張を目指せばいい。


藤原

そうそう。それこそが人類の進歩ですからね。

安田

動物と違って、人間だけが肉体をむしろ退化させながら、周囲のモノや技術を利用して、それを遥かに超える能力を手に入れてきた。この違いが、知性の本質なのかもしれませんよね。

藤原

オートバイの世界にも似たような話があります。完成された高性能なバイクよりも、少し未完成で「カスタム」の余地が残されているバイクの方が、結果的に長く愛されたりするんですよ。

安田

なるほど〜。人間との相性がいいからでしょうね。弱さや余白があるからこそ、自分で拡張していく楽しみが生まれる。

藤原

ええ。完成品をただ享受するのではなく、そのプロセスに人間は喜びを感じる生き物なんですね。

安田

まさに人間という存在そのものが、最高のカスタムベースなのかもしれない(笑)。

藤原

そうですね(笑)。だからもっと貪欲に自分以外のあらゆるものを利用して能力を拡張していくべきなんだと思います。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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