しばらく前から、週に何度か自宅近くの安いチェーン店のジムに行き、ランニングマシンに乗るようにしています。
鍛えるとか、痩せるとか、カッコいい理由ではありません。
加齢により、少し睡眠の質が悪くなったような感覚があり、そういえば純粋な運動のような「ちゃんとした」疲労が足りていないのかも……と思いあたったためです。
実際、ムリヤリ汗を出しておくと、目的にはかなっているような気がします。
ともあれ、廉価系ながらジムに何年かぶりに足を運んでみると、ちょっと新鮮な気持ちになるものです。
まず、誰も口を開かない。人が多かろうと少なかろうと、他人同士であれば喋るわけもなく、自分がやろうとしたことのために訪れ、済んだら去っていく。
これがジムのレベルが上がってくると、顔見知りになって人間関係が生まれたり、最悪ヒエラルキーができたりするかもしれませんが、本来は淡々と過ごす場所です。
また、いまのジムは例外なくそうだと思いますが、いる人の8~9割がた、スマホを持ち、イヤホンを着けています。(自分も含みます)
コスパタイパの時代ですから、スマホを封印して運動するという方が、むしろ不自然かもしれません。ただ、運動効率をマジメに考えながらやっていると、気づくとイヤホンからの音を聞いていなかったりもします。
そして、終わったあとの「良きこと感」もまた、日常生活では少ない肯定的感覚かと思います。仕事でもプライベートでも、たいていは行った中身より、結果に引きずられるものです。やっただけで良かったと思えるようなことは、ほかには「自発的に勉強をする」くらいでしょうか。
ただ、結果を求めて、数値管理して、追い込んで…となると、自己の欲求から起因したにもかかわらず、断続的な苦行に至ってしまう可能性が少なくないとは思います。
いずれにせよ、これらの
「寡黙に過ごす」「精神的な無に近づきうる」「肯定的行為である」
という点を総合すると、これ、お手軽な現代の禅行といえるのではないでしょうか。
……まあ、ジム内のあちこちに付設されたタブレットには、上級コースへ誘導する広告が随時流れていて、実際はど商売の場なんですけど。