その26 平安的流行

勤め先の近所に大学がありまして、
夕方には学生さんたちがぞろぞろ帰っていくのを見るのですが、
その多くが
上の服か下の服かあるいはその両方がガバガバの
平安時代かな?というような
シルエットなのであります。

むろん、流行というのはそういうものです。
そのあたりの感覚をコモンセンスとして受容して、
かつ身だしなみが自由である
大学生のころがいちばんわかりやすく体現しているのでしょうが、
たくさんの若者が大枠でほぼ同じ方向性の格好でいるのを見ると
なかなか壮観であります。

すでに流行の当事者ではない身としては
それを否定する気はなかったのですが、
ある時、オーバーサイズのテーラード風ジャケットを見たときには
ちょっと鼻白むものがありました。

スーツの世界で
興味のある人間でなければわからないような細かいディティールを、
古今東西の大人の男が何十年何百年とわちゃわちゃ遊んでいるのは、
そもそもジャケットは「肩に合わせて着る」、という絶対の規則、
大前提でのことです。

当のビッグシルエットのジャケットが
そんなカタい話と無関係なトレンドアイテムなのは百も承知ですが、
じゃあ最初からテーラード風にすんなや、ぜんぶ襟なしでええやんと
反射的に思ってしまうわけです。

あと、女性がみんなベージュのトレンチコート着てたときも
こいつら第一次大戦の塹壕の中から来たんやろかとか思ってしまいましたが
(もともとは100年前の軍隊のコートが出自)
こんなことをいっているともう
ええ老害ですともそうですとも。

さておき
テレビでは年齢が中年以降の出演者さんもスタイリストさんによって
ばりばりオーバーサイズの衣装を着せられています。
そしてカジュアルウェアであれば
そちらの方がいい、というか自然に見えるのは確かです。

わたくしは10年近く
同じメーカーの同じサイズのTシャツを着続けていますが、
それを買い始めた当時かなりゆったりしたサイズ感だったものが
今ではジャストか、ややタイト目にしか見えません。

Tシャツのサイズは全く変化していないのに、
主観的にはワンサイズ以上、ツーサイズ近く縮んだような感覚なのです。

感性の鈍った人間にすら波及し、包み込み、押し流す。
流行、というか世間の流れの力を見た心持ちがいたします。

 

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著者自己紹介

「ぐぐっても名前が出てこない人」、略してGGです。フツーのサラリーマン。キャリアもフツー。

リーマン20年のキャリアを3ヶ月分に集約し、フツーだけど濃度はまあまあすごいエッセンスをご提供するカリキュラム、「グッドゴーイング」を制作中です。

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