第149回 業界の常識から外れたところにあるもの

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

私のメールには、週に数回googleから通知が届きます。
その内容は私のお店に新しい口コミが入ったことを通知するメールなのですが、そんな口コミを見ていると、少し興味深いことに気がつきます。

それは、多くのお客さんが私のお店の「ある一点」をとても高く評価してくれている、ということ。そして業界の常識で考えるならば、その一点とはコストを削減する対象である一方、私のお店はその点に多くのコストをかけているということ。

つまり、業界の常識から外れてしまっている要素が口コミとなり、その口コミが集客に繋がっていると言える訳です。


自分で商売を始めて4〜5年が経った頃だったでしょうか。
私は自分のお店が「飲食業で理想的」と言われている経費の比率から、かなり外れた経営をしてしまっていることに気が付きました。

この事実を知った時、少しの不安を感じたのは確かではあるものの、同時にある疑問も私の中に湧いてきたのです。
「これは自分のお店がおかしいのではなく、むしろ理想的と言われている比率の方がおかしいんじゃないか」と。

商売には誰もが共通して成功できる「正解」なんていうものはない以上、どちらが正しくてどちらが間違っていると決めようとする事自体、意味がないのかも知れません。

ただ、これまで商売をやってきて感じるのは、業界の常識と言われる範囲から外れた投資をしているからこそ、お客さんから評価してもらえているのであり、私がもし業界の常識と言われる範囲に経費を抑えようとしてしまっていたら、お客さんから評価されることもないお店になってしまっていたように思えてならないのです。

つまり、同業他社とは違うから不安になるのではなく、同業他社とは違うからチャンスだということ。逆に考えれば、同業他社と同じだから安心なのではなく、同業他社と同じだから強みのない商売になるということ。

全てにおいて業界の常識を疑えば良いとは思いませんが、自分がこだわりたい要素があるならば、たとえその要素が業界の常識から外れていたとしてもそこを伸ばすべきであり、その違いにこそ「自分が商売をする意味」があるのではないかと私は思うのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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