第368回「暑さ手当について」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第367回「日産の栄光と没落」

 第368回「暑さ手当について」 


安田

最近猛暑で建築現場が大変みたいで。35°を超えたら「暑さ手当を支払う」という会社が出てきました。

石塚

これ1000円でしょ。もうちょっと上げた方がいいと思う。

安田

30°で500円、35°で1000円の手当が出るそうです。1000円じゃ安いですか。

石塚

「気を遣ってますよ」というPRとしてはいいけど。もうちょい上げた方がいい。

安田

いっそ35°まで上がってくれた方が嬉しいかもしれませんね。現場の人は。

石塚

7月、8月は、ほぼ毎日超えてたんじゃないですか。勤務日数とほぼイコールだろうから月2万円ぐらい。

安田

2万円増えたら嬉しいんじゃないですか。

石塚

暑さグッズも買わなくちゃいけないし。ネッククーラーとかは安いけど。ファンが付いてる空調服とか。あれは相当涼しいらしいですけど高いんですよ。

安田

庭師の知り合いが言ってました。冬はたくさん着ればいいけど夏は暑くて大変だって。

石塚

そうなんですよねぇ

安田

人不足なのにこの暑さでさらに人がいなくなりそう。建設現場はどうなっていくんでしょう。老朽化したインフラがそこらじゅうにあるのに。

石塚

解決策はひとつしかなくて。建設業界も世の中の当たり前を承認しましょうと。

安田

世の中の当たり前?

石塚

建設業って、とにかく納期重視で無理無茶を押し付けるんですよ。「間に合わないんだったら土日でも夜でもやれ!当たり前だろ」って。

安田

今どきそんな職場には誰も来ないですよ。

石塚

そう。ただ工期が伸びると管理コストがかさむから、どうしても帳尻合わせが下に行くんです。構造的に。

安田

そこを変えないともう無理だと。

石塚

無理。本当に働く人がいなくなっちゃう。工期が伸びることも織り込み済みの予算でやるしかない。ちなみにどの施工業者が今いちばん確保しづらいかご存知ですか。

安田

いえ。知りません。足場作りとかでしょうか?

石塚

実はエレベーターの施工業者を取り合っているんですよ。

安田

エレベーターですか。

石塚

エレベーター設置にはそれなりの技術が必要で。都内ってもうエレベーターだらけでしょ。ビルもエレベーター、タワマンもエレベーター。

安田

確かに。都内はエレベーターだらけですね。でもそんなにニーズがあるなら値上げすればいいのに。エレベーターの会社って大手ばかりですよね?

石塚

メーカーはみんな大手ですよ。日立、東芝、三菱。だけどそのエレベーターを取り付ける工事って下請けがやるんですよ。そこを今までみんなで散々叩いてきたわけです。

安田

なんと。

石塚

だから下請け業者に人がいなくなっちゃって。エレベーターの設置工事が出来ない。エレベーターが付かないから工事がずっと止まってる。

安田

エレベーターがないと資材も上に運べませんからね。

石塚

そう。メーカーは作るだけだからいいんだけど。設置する会社は大変なんですよ。みんな中堅中小企業で。そこを叩くわけですよ。工事料を下げて納期を早くしろって。

安田

ひどいですね。

石塚

「エレベーターを取り付けるだけだろ?休みの日にもやれよ」みたいな。

安田

酷使しすぎて発注先が無くなってきたと。

石塚

おっしゃる通り。エレベーター会社も人が採れなくて断らざるをえない。だって給料が安くて休みが少ないような仕事を誰がやりますかって話ですよ。

安田

どうしたらいいんですか。

石塚

休みも給料もそれなりのものにして、費用・価格に反映されても許容するしかない。

安田

業界全体で労働環境を良くしていかないと未来はないってことですね。

石塚

今まさに二極化が進んでいて。価格を上げて待遇を改善できない会社はどんどん倒産・廃業しています。

安田

そうなると価格の高いところしか残らないから、マンションや一戸建てはさらに高くなっていきますね。

石塚

もう新築は買えない。仕方ないですよ。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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