第346回 常識を冷やしてみたら…

 このコラムについて 

「担当者は売り上げや組織の変革より、社内での自分の評価を最も気にしている」「夜の世界では、配慮と遠慮の絶妙なバランスが必要」「本音でぶつかる義理と人情の営業スタイルだけでは絶対に通用しない」
設立5年にして大手企業向け研修を多数手がけるたかまり株式会社。中小企業出身者をはじめフリーランスのネットワークで構成される同社は、いかにして大手のフトコロに飛び込み、ココロをつかんでいったのか。代表の高松秀樹が、大手企業とつきあう作法を具体的なエピソードを通して伝授します。

本日のお作法/常識を冷やしてみたら…

 

カップヌードルといえば、熱湯を注いで3分。
もはや説明する必要もないほど、日本人の暮らしに定着した愛される食事のひとつです。

ところが、この夏。

日清食品さんが発売したのは、“冷水を注いで5分”のカップヌードル…

「冷しカップヌードル ピリ辛キムチ味」「冷しカップヌードル 鶏塩レモン味」です。

え、冷水で??

そんな疑問を抱いた方も多かったのでしょう。

1~2カ月は持つと見込んでいた当初の供給分が、わずか1週間で完売したとのことです。

このヒットの理由は、味のおいしさだけではなさそうです。

「本当に冷水でつくれるのか」
「どんな食感になるのか」

そんな驚きや好奇心まで含めて、食べてみたくなる商品なのであります。

興味深いのは、同社が、新しい味を加えただけではなく、長年守り続けてきた“熱湯3分”という前提そのものを疑ったことです。

長く売れ続けてきた商品のルールを変えるのは、簡単なことではありません。

成功してきた企業ほど、
「これまで、この方法でうまくいってきた」
という経験が蓄積されます。

その経験は強みになる一方で、いつしか“変えてはいけない常識”にもなりかねません。

今回の商品は、開発に5年を要し、冷水でも麺が戻る独自製法は、特許も取得しているとのこと。

思いつきだけで常識をひっくり返したのではありません。

長く愛されてきた商品だからこそ、その価値を壊さないよう、時間と技術をかけて、新しい食べ方をつくったのでしょう。

これは、私たちの仕事にも通じます。
会議は会議室で行うもの。
研修は講師が教えるもの。
得意先への提案は値引きが当たり前。

長く続いている仕事の中には、目的ではなく、いつの間にか“前提”になっているものがあります。

大切なのは、何でも新しくすることではありません。

守りたい価値は何か?

その価値を届け続けるために、変えてもよい前提は何か。
そこを見分けることなのだと思います。

1958年、安藤百福さんがインスタントラーメンを生み出してから68年。

日清食品さんが今回変えたのは、カップヌードルそのものではなく、「お湯が必要である」という私たちの思い込みでした。

変えてはいけないものを守るために、変えてよい常識を疑ってみる。

冷たいカップヌードルの熱い人気に、老舗企業の新しい作法を教えていただいたのであります。

 

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高松 秀樹(たかまつ ひでき)

たかまり株式会社 代表取締役
株式会社BFI 取締役委託副社長

1973年生まれ。川崎育ち。
1997年より、小さな会社にて中小・ベンチャー企業様の採用・育成支援事業に従事。
2002年よりスポーツバー、スイーツショップを営むも5年で終える。。
2007年以降、大手の作法を嗜み、業界・規模を問わず人材育成、組織開発、教育研修事業に携わり、多くの企業や団体、研修講師のサポートに勤しむ。

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