このコラムについて
「担当者は売り上げや組織の変革より、社内での自分の評価を最も気にしている」「夜の世界では、配慮と遠慮の絶妙なバランスが必要」「本音でぶつかる義理と人情の営業スタイルだけでは絶対に通用しない」
設立5年にして大手企業向け研修を多数手がけるたかまり株式会社。中小企業出身者をはじめフリーランスのネットワークで構成される同社は、いかにして大手のフトコロに飛び込み、ココロをつかんでいったのか。代表の高松秀樹が、大手企業とつきあう作法を具体的なエピソードを通して伝授します。
本日のお作法/期待の裏側
某大手さんにて、次世代リーダー育成を目的とした全12回のトレーニングが行われました。
自薦・他薦で選ばれた12名が、最終回には「より良い職場づくり」を目指し、自身の実践行動を経営陣に発表します。
「他階層の研修の参考にもなるので、高松さんもぜひ」とお声がけいただき、ワタクシも同席させていただきました。
皆さんの発表からは、自分たちの「職場や組織を良くしたい」という思いが伝わってきました。
ところが、その後の振り返りで、3名の方から少し異なる言葉がこぼれたのです。
「今の仕事だって、責任を持ってやっています」
「次世代リーダーと呼ばれても、役職や給与が変わるわけではありません」
「新しい目標を宣言すれば、忙しい毎日に、さらに別の仕事が増えるんですよね」
「期待してくれるのはありがたいけれど、それならまず、タイトルや報酬も考えてほしいです」
胸の内にあった言葉が、ようやく出てきたように感じました。
一方、経営陣は、こう受け止めていました。
「多くのメンバーは、新しい目標や成長の機会を見つけてくれた。そして感謝の言葉も聞かせてくれた」
「でも、あの3人には、私たちの期待がうまく伝わらなかったのかな」
彼らの可能性を信じて、機会を用意したのでしょう。
同時に、経営陣もこの取り組みに期待しています。
次世代の人材が育ち、職場の生産性が高まり、会社の業績につながっていくことを。
3人も、組織を良くすることに反対しているわけではありません。
新たな役割を担うなら、自分たちの働き方や処遇についても期待していたのだと思います。
同じ「期待」という言葉を聞いても、
「自分を見てくれている」
と感じる人がいます。
一方で、
「もっと頑張って、ということか…」
と受け取る人もいます。
今回の3人には、どうやら後者に聞こえたようでした。
経営陣は、成長の機会を贈ったつもり。
受け取った側は、業務が追加されたと感じている。
同じ箱を開けたはずなのに、中身が違って見えているのです。
高松も研修の仕事をしておりますので、新しいご依頼をいただくのは、もちろんありがたいことです。
ただ、
「高松さんに期待しています! これまでの研修に加えて、全社の組織改革もお願いします。期間と報酬はそのままで」
と言われたら、さすがに少しだけ、考えてしまうかもしれません…
期待に応えてほしいのであれば、何を任せるのか。そのための時間や支援はあるのか。役割や処遇は、この先どうなるのか。
そこが伝わっていれば、3人にも、経営陣にも、見えてくるものがありそうです。
「期待しています」は、うれしい言葉です。
ですが、期待という名の発注書には、できれば業務内容に加えて、条件も書いておいてほしい。
新たな役割を担う社員さんからすれば、自然な思いかもしれません。
終了後、経営陣からは、
「金銭以外の報酬や、仕事を通して成長できることのありがたさも感じてほしかったな」
という声を聞かせていただきました。
その思いも本心なのでしょう。ただ、お互いが「期待の先」に思い描いていたものは、少し違っていたようです。
そんなお話を伺いながら、ふと思いました。
社員さんにとっては、「また仕事が増えるのか…」という話でも、我々のような外部パートナーにとって、新しい仕事のご相談は、
「ありがとうございます! ぜひ、詳しく聞かせてください!」
となることが多いのです。
もちろん、外部への依頼には、業務内容と報酬の話がセットでついてきます。
同じ「期待しています」でも、発注書があるかどうかで、受け取り方はずいぶん変わるものですね。
経営陣と社員さんの期待の隔たりを埋める仕事もあるでしょう。社員さんの負担を減らすため、外部で引き受けられる仕事もあるかもしれません。
あれこれ提案できそうだな、と考えながら帰るワタクシ。
どうやら、「仕事が増えるかもしれない」ことに、いちばん期待していたのはワタクシだったのであります。

















