泉一也の『日本人の取扱説明書』第17回「商人の国」

泉一也の『日本人の取扱説明書』第17回「商人の国」
著者:泉一也

このコラムについて

日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。

「もうかりまっか」
「ボチボチでんな」

といって、会話が始まる日本。一部の地域かもしれないが。

江戸時代まで遡ってみると、この時代の欧米諸国は、物質文明を飛躍的に発展させた産業革命の真っ只中であった。江戸末期には、黒船が日本近海に現れるようになったが、それを見た日本人はびっくら腰を抜かしたという。黒電話を使っている昭和人にスマホを見せる以上の衝撃だっただろう。経済でも武力でも世界を支配していた欧米諸国に、日本は260年間の鎖国ではるかに遅れていたはずなのに、開国してたった50年で国際連盟の常任国となり世界の五大国となった。さらには、太平洋戦争の敗戦で疲弊しきっていた日本は、1950年の国民総生産(GNP)は320億ドルでアメリカの3810億ドルのわずか1/10にすぎなかったが、1968年には世界第2位の経済大国にまでなった。

いったい何がこの国にあるというのか。勤勉と幸運だけではこの経済成長の説明がつかない。ここで日本はもともと商人が作った国で、その商人センスを磨くものが日本文化の隅々にあるので、潜在意識レベルで日本人は儲かるように意思決定をし、商人として成長する土壌があるのだと仮定しよう。そうすると、いろいろ合点のつくことがある。

たとえば、日宋貿易の平清盛、楽市楽座を立ち上げた織田信長といった天下統一を果たした二人、日本初の会社をつくり明治維新の立役者となった坂本龍馬、58兆円の売上げがある世界一のグループ企業「三菱グループ」の創設者岩崎弥太郎、日本列島改造論を実行した田中角栄、すべて商人センスにすぐれたリーダーたちである。彼らは貿易など流通を活性化させ、それを国づくりに繋げたことで経済を成長させた存在だが、皆、日本の文化と風土から生まれ育った人物である。

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