元大手ビジネスマン39歳の
小さなビジネス開業スクール 体験記 ~9日目「商品に名前を付けてあげる」~

商品に名前をつける。

子供やペットに名前をつける経験。あるいは、友達や先生にあだ名をつけた経験がある人はいると思う。僕にもそういった経験があり、商品に名前をつけるなんて、なんてことないものだと思っていた。しかし結果的に、この「商品に名前をつける」が、僕が今回のBFSで最も苦労したパートだ。ペットの名前や、あだ名をつけるのとは、全く違ったものだった。商品の名前をつけるには、自分の中に2つの人格を持たなければならないのだ。どういうことか。BFS9日目についての体験記である。

商品名の作り方

BFS9日目は、商品に名前をつけ、その商品を一言で表すタグラインを決める。前回8日目の最後に、講師の佐藤さんから良いネーミングとはどんなものかについての講義があり、ネーミング作成の手順について教わった。その手順に従って、受講生各自が考えた商品の名前を9日目の前半に発表し、受講生や佐藤さんの意見を聞きながら、商品名を調整して決定する。

ここで、8日目のネーミングについての講義内容を少し紹介する。
まず、良いネーミングとはなにか。良いネーミングの3条件は以下の通りだ。

Ⅰ.商品・サービスを想起すること
名前を聞いて、どんな商品・サービスか全くわからないものではなく、商品を連想できるものが良い。

Ⅱ.独自である
同じ名前の商品が世の中に存在しないこと。検索して調べる。

Ⅲ.覚えやすこと
人は全く新しい言葉よりも、見覚えのある言葉の方が覚えやすい。普段づかいの言葉のすぐ近くにある言葉が良い。特にこのⅢがポイントだろう。

次にネーミングの手順である。以下の4つの手順で、商品名をつくる。

① キーワードを抽出する
コンセプト文から気になるワードを抽出し、さらにそのワードから連想される言葉を書き加えていく。

② 基本型で名前をつくる
ネーミングの基本型(そのまま、たす、ひく、かける)を用いて、抽出したワードから商品名の候補をいくつかつくる。

③ 検証する
商品名の候補が上記の「良いネーミングの3条件」に合うか検証する。

④ 愛せるものを決める
最後に、自分が愛せるものをひとつ選択する。

そして、最後にタグラインを決める。タグラインとは、「顧客がその商品名を見たときに湧くであろう疑問に答えるもの」「商品を一言で説明するもの」だ。

今回、僕が作った商品名とタグラインは以下のものである。僕の場合は、屋号、商品名、タグラインと3つ作成した。

ネーミングのコツ

今回のBFSで最も苦労したパートと言えるネーミング。これまでも、子供やペットの名前を考えたり、友達や先生のあだ名をつけたりする経験はあったのになぜこんなにも苦労したのか。その理由をあとから思い返してみると、商品のネーミングには2つの自分を使い分けなければいけないからだろう。2人の自分とは、主観と客観である。

子供やペットの名前をつけるとき、主に必要なのは主観である。この子はどういう人間か、このペットはどんな性格か、そんなものはまだわからない。だからこそ、その時点での自分の願い、祈り、あるいは自分が呼びたい名前、これらを中心に考える。子供やペットのことを想いながら主観で考えるのである。

では、友達や先生のあだ名の場合はどうか。特に、姓名をもじったあだ名ではなく、その人そのものを表したようなあだ名をつけるとき、必要なのは客観である。目の前の具体的な人物がどういう人なのか、どんなクセがあるのか、人物の特徴的なことを客観的に捉えて表現するからあだ名として成立する。

つまり、これまで経験していた名付けは、主観か客観のどちらか一方で考えていたものだ。しかし、商品のネーミングは、主観と客観のどちらか一方だけでは良いものにならない。商品は、子供やペットのように、将来どうなるのか全くわからないものではない。つくりたい商品のイメージは既にある。一方で、実在人物のような具体性は、まだない。客観だけでは自分の思いは込められないし、主観だけではお客さんに伝わらない。主観と客観の両方を使いながら名前を決める必要があるのだ。

しかし、主観と客観を両方同時に自分の中に存在させることはできない。ネーミングの段階や作業内容で明確に分けなければならない。僕の場合、この主観と客観の使い分けができていないために、苦労したのだ。

具体的に言うと、上述したネーミング手順の①キーワードの抽出、②基本型で名前をつくる、③検証する、は客観的でなければならず、主観の自分を排除しなければならない。特に②の名前をつくる場面では、「いい名前をつけたい」「しっくりくるものがいい」「自分が呼びたい名前がいい」などの主観が入ると手と思考が止まり、名前の候補すら出せなくなる。どこまでも客観的に、機械的に候補を出していく必要がある。

そして、得られた候補の中から、最後は主観で決めるのだ。自分にとって一番しっくり来るもの、愛せるもの、ずっと呼びたくなるもの、を選択する。主観と客観の明確な使い分け。これがネーミングのコツなのだ。

次回はお店(ホームページ)作り

さて、今回の9日目までで、自分の商品、商品の名前とタグライン、商品をマーケットに接続するためのコンセプト文が出来上がった。商品として形になるものは一通り揃ったことになる。次の10日目からは、この作った商品を並べるお店作り(ホームページをつくる)パートだ。この話については、また次回。

これまでの体験記一覧

ー 書いた人 ー
大谷 信(おおたに まこと)
大手企業でエンジニアとして勤務していたが9月に退職、自分らしい働き方・生き方を模索中。ブログも連載しています。

HP https://otani-makoto.net/
Twitter https://twitter.com/OtaniMkt

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