「すべての人は、すごい可能性を秘めている」と信じる大野と、「多くの人は目的などなくただ存在しているだけ」と断ずる安田。人間の本質とは何か。人は何のために生きているのか。300文字限定の交換日記による言論バトル。
119通目/安田からの返信
「挫折体験とは何か」
離婚したこと。会社が倒産したこと。このふたつは人生において最も大きな挫折でした。それがあるから今の自分があるとも言えます。でも同じ体験をしたからといって同じことを学ぶとは限りません。私がこの体験から学んだのは人を失った喪失感です。離婚したことではなく、離婚して家族を失ったこと。会社が倒産したことではなく、会社が倒産して仕事仲間を失ったこと。正直これはかなりキツかったです。今の自分があるのはそこから立ち直れたからではありません。今でもその傷を引きずっているからです。本当にきつい体験は回復できない傷を心や体に残します。でもそれでいいのだと思います。人は傷つき挫折しながら前に進んでいくものだから。
前回118目/大野「コーチとして最も大切な事は何か?」
その通りですね。どうやら結論が見えてきましたね。コーチとして最も大切な事は何か?を今尋ねられたら、僕はコーチングが一切通用しない場面がビジネスにも人生にもあるって事を体験として持っているかだと答えるでしょう。〝その時〟コミュニケーションスキルとか心理学とか、どんなに立派な理論や考え方もクライアントには役に立ちません。
〝その時〟はただそばにいて一緒に泣くことしかできない。一緒に悲しむことしか。そばにいることが精一杯。でもテクニックやスキルに溺れている人は多い。コーチの足下に何があるか?ハンマー持たせたら全て釘に見立てたりする。同じ人間しかし完全に違う人間。コーチの足下にそれがあるかだと思う。
ー大野より
前々回117通目/安田「答えを探す旅」
おっしゃるとおり。才能開花のやり方は人によって違います。どんなにその人のことを思ってアドバイスしたとしても、成功体験の押し付けになってしまうことがほとんどです。個性を尊重するってほんとうに難しい。一人ひとりの個性に合わせて答えを考えるなんて現実的には不可能だと思います。つまり、どんなに親身になって相談に乗ってくれる人でも、自分の個性に合わせた方法を教えてくれるわけではない。このことをしっかり自覚しておいたほうがいいのです。最終的には自分に合ったやり方は自分で編み出すしかない。人がくれるのは答えではなく、あくまでも答えにたどり着くためのヒント。人生とは自分なりの答えを探す旅なのでしょう。
ー安田佳生より
交換日記をする二人
●火曜日
安田佳生(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。
2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。
●金曜日
大野栄一(おおの えいいち)
株式会社一番大切なこと 代表取締役
https://ichibantaisetsunakoto. com
https://www.sugoikaigi.jp/coach/eiichiono/