【ドバイのウメール君】
7年前、ドバイでシェアオフィスを借りていました。
そのシェアオフィスには、
ウメール君というパキスタン人がいました。
昼食を一緒にとるなど、仲良くしていたのですが、
彼は、銀行からの借金を滞納をしたため、
会社をクビになり、パスポートを取り上げられ、
連絡が途絶えてしまいました。
ああ、美人の奥さんと乳飲み子がいるのに、
借金取りに追われて、本国へ強制送還とは。
借金の件は本人が悪いとしても、
とても残念な気持ちを感じていました。
【成功を喜べない感覚】
そのウメール君から、連絡が来たのです。
パキスタンに帰って、
5年で4,000万円ほどを貯め、
それを元手に土地を買って、
新しく会社を立ち上げたそうです。
自動車ディーラーの会社で、
オープンセレモニーに来ないか?
とのことでした。
借金取りから逃げ回っていたウメール君、
パスポートを取り上げられたウメール君、
毎回昼ごはんを奢ろうとするウメール君、
携帯電話を何度も止められるウメール君、
身重の奥さんに借金をさせるウメール君。
そんなウメール君しか知らないので、
にわかには本当のことだと
信じることができません。
友の成功を信じることができないどころか、
成功してほしくないとさえ、
思ってしまう自分がいました。
なぜそう思うのかというと、
私にとってウメール君は仲の良い友達で、
彼に迷惑をかけられたわけでも、
貸したお金が返ってこなかったわけでもありません。
ただウメール君は、
約束は守る、誠実に生きる、他人に迷惑をかけない。
という、日本人的模範生ではないので、
私はなんとなく疎ましく感じたのです。
【おめでとう、ウメール君】
一晩寝て、考えを改めました。
日本人的模範生でなくとも、
パキスタンで成功しているのなら、
それはそれで、お祝いをしてあげるのが、
普通の友達としてのあり方かなと思い直したのです。
なにより、彼は日本人ではないのですから、
日本人的模範生のように振る舞う必要はありません。
ビジネスが成功すれば、それで評価されるのです。
私の善悪の判断を押し付ける必要もありません。
彼が大好きだったことを思い出したので、
たっぷりと日本のお菓子を送りました。
もちろん、
オープニングセレモニーはお断りしました。
行ったとたん、
怖い方々が出てきたりすることも、
充分にありえると考えたからです。