収穫時間

土を耕し、苗を育て、田植えをして、
いろんな管理をした結果、
ようやく稲刈りができるようになる。
土を耕し始めるのが1月。稲刈りは10月。
つまり9ヶ月は収穫のための準備期間である。

いや、じっさいの稲刈りは
1日で終わってしまうから、
99%は準備期間ということになる。
長い長い準備と一瞬の収穫。
ここだけ見ていると、稲作はとても
効率の悪い仕事に見えてくる。

狩りに行けば一瞬で食料は手に入る。
お腹が空いた時だけ働けばいい。
じつは人類は農耕を始めてから
驚くほど労働時間が伸びたと言われている。

だがその恩恵として安定した食生活を手に入れた。
必要な時だけ狩りをするやり方はたしかに効率がいい。
だがそれは運と一撃必殺の力に依存した生き方でもある。

私は狩猟生活を否定しているのではない。
それはそれで素敵な生き方だと思う。
重要なのは自覚があるかどうかだ。
自分は狩猟民なのだという自覚。

運悪く食料が見つからないこともあるし、
狩りのスキルも磨き続けなくてはならない。
ずっと食料にありつけない日もあるだろう。
それが狩猟民族というものだ。
その代わり田植えや稲刈りという労働からは解放される。

どちらを選ぶのかは自分次第だ。
問題は自覚なく狩猟生活を続けている人たちである。
とくに経営者とフリーランス。
自分がどちらの民族なのかを
ちゃんと自覚しなくてはならない。

見極めるポイントは収穫時間だ。
ビジネスに置き換えるなら
お金になる仕事をしている時間。
これが9割を超える人は間違いなく狩猟民族である。

時給仕事は典型的な狩猟民の働き方だ。
働く時間はすべてお金になる。
つまり収穫時間が100%なのである。
収穫しかしないのだから効率がいいとも言えるが、
安定とは程遠い生き方だ。

まず収入が増えない。
そして仕事が見つからなければ収入はゼロだ。
これはバイトや会社員に限った話ではない。
労働時間が長いわりに収入(売上)が増えない経営者は、
みんな同じことをやっている。

彼らに共通するのは
お金になる仕事の時間が長いことである。
そして時給が驚くほど安い。
なぜなら彼らは時給を上げるための
仕事をやっていないから。

狩猟民族から抜け出したいのであれば、
やるべきことはひとつ。
お金にならない仕事を増やすことだ。
稼ぐ時間(収穫時間)は半分でいい。
残りの時間は時給を上げるために使う。
稼げない人たちは収穫の時間が長すぎるのである。

 

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1件のコメントがあります

  1. 種まきをすることを面倒くさがったり、否定する人、そのリスクや手間暇を取らない人は
    「これはバイトや会社員に限った話ではない。労働時間が長いわりに収入(売上)が増えない経営者」の特徴だと思います。

    自分がどれだけ種まきをしていますかと自問自答したコラムとなりました。
    ありがとうございます。

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