第3回 借金して買った10台のエアコンが、練習台

この対談について

大阪・兵庫を中心に展開する、高価買取・激安販売がモットーの『電材買取センター』。​​創業者である株式会社フジデン代表・藤村泰宏さんの経営に対する想いや人生観に安田佳生が迫ります。

第3回 借金して買った10台のエアコンが、練習台

安田

前回は「藤村さん、よくぞご無事で…」と言いたくなるような衝撃的エピソードが満載でしたね(笑)。


藤村

僕としては「明るい引っ越し屋さん」を始めたつもりだったんですけどね(笑)。このまま続けても幸せな人生にはならないなと、1年半ほどで僕だけ辞めることになりました。

安田

その後はエアコンの移設工事の仕事を始められたということですが、どういういきさつで?


藤村

いきさつというほどのものでもなく、もともと引越し屋の時から「エアコンの移設工事」には馴染みがあったんです。エアコンを新居に持ちこむ方も多いので。で、引越し屋を辞めて「次は何をしようか…。あ、エアコンやるか!」くらいの軽いノリでして。

安田

なるほど(笑)。ともあれ、新しくやることも決まったと。それで最初は何から始めたんですか?


藤村

街の電気屋さんを訪ねて「給料はいらないんで、いろいろ教えてください」ってお願いしましたね。

安田

ほう、つまり無給での修行を願い出たわけですね。実際受け入れてもらえたんですか?。


藤村

受け入れてはもらえたんですけど、技術は全然教えてもらえなかったんですよ(笑)。なので仕方なく「取付説明書」を見ながら独学で勉強しました(笑)。

安田

結局、独学だったんですか(笑)。…あれ? 確かエアコン工事には資格が必要なんじゃなかったでしたっけ。


藤村

「取付工事」自体は資格不要なんです。でも配線工事までするなら「第二種電気工事士」という資格が必要で。僕も途中でそれに気づいて、慌てて取得したんですけど(笑)。

安田

笑。というかそもそもエアコン工事は未経験だったんだから、まずは電気工事屋さんに就職して、資格を取って、それから独立する、という風には考えなかったんですか?


藤村

そう言えば全くそんなこと思ってなかったなぁ…なんでだろう?(笑) 引越し屋を辞めた後、すぐに個人事業主になって『藤村電気設備』を始めちゃいましたので。

安田

藤村さんは本当に行動力の塊ですね(笑)。それで、藤村電気設備をスタートさせた後、仕事は順調に増えていったんですか?


藤村

いえ、全く(笑)。ひたすら営業しまくりましたが、全然ダメでしたね。だから最初の1年くらいは「なんでも屋」のようなことをやって食いつないでいましたね。「藤村電気設備」といいながら、草刈りばかりやっている時期もあったり(笑)。

安田

ははぁ、そうでしたか(笑)。ちなみにエアコンの移設工事スキルは、ちゃんと独学で身についたんですか?


藤村

はい。新品のエアコンを10台買って、実践で覚えていったので。

安田

え、どういうことですか? エアコン10台、自腹で買ったんですか?


藤村

そうそう、借金して(笑)。で、友達や知り合いに頼み込んだんですよね。「取付費用はいらないので、練習台になってくれ」と。

安田

またまたすごい行動力ですね(笑)。でも、実際問題なく取り付けられたんですか?


藤村

…いえ、ひどいもんでしたね(笑)。エアコン本体が傾いていたり、室外機をものすごく高い位置に設置してしまったり…。配線工事がうまくいかなくて、ブレーカーがボンッと爆発して黒焦げにしてしまったこともありましたっけ。

安田

なんと……。友人だから許してくれたんでしょうけど、なかなか危険なことをやらかしていたんですね(笑)。しかも利益は1円も出ていないんでしょう?


藤村
出てないですね。そもそもエアコン10台買うお金も手元になかったんで、カードローンやサラ金で目一杯借金している状態だったので、むしろ大幅にマイナスです(笑)。
安田

いやぁ、よくそこから持ち直しましたよね(笑)。


藤村

まぁ、とにかく必死でやってましたね。とにかく何度も何度も同じ引越し業者さんにご挨拶に行って。「近くまで来たので顔出させていただきました〜」なんて言いながら。

安田

「近くまで〜」って、本当はわざわざ行っているわけでしょ?(笑)


藤村

もちろん(笑)。相手もたぶん薄々気づいていたんでしょうね。「いつも一生懸命営業に来てくれてるし、このお客さんのところに行ってみる?」って仕事を回してくれるようになって。

安田

おぉ、すごい! じゃあそこからは、その引越し業者さんが仕事を回してくれるのを待つスタイルに?


藤村

いえ、お客さんを利用させていただいて、さらに攻めた営業をすることにしたんです。

安田

ほう。それはどんな?


藤村

移設工事が終わったら、言うんです。「エアコンガスの補充、本来なら8000円かかるんですけど、今回は無料でします。その代わりと言ってはなんですが、引越し業者さんに僕の仕事ぶりが良かったって伝えてもらっていいですか?」って。

安田

へぇ〜! お客さんに「藤村電気設備さんはサービスが良いよ」っていう口コミをしてもらうわけですね。しかも直接。


藤村

そうそう。その場で僕が引越し業者さんに電話をかけて「はい、言ってください」って(笑)。けっこう強引ではありましたけど、効果絶大でしたね。

安田

確かに強引だ(笑)。でもそれで藤村電気設備さんの評判はどんどん良くなっていったと。


藤村

ええ。引越し業者さんの間で、「すごく親切な電気屋さんがおって、お客さんからの評判もめっちゃイイらしいで」って口コミが広がって。何も営業せずに最終的には30社くらいの業者さんとお取引していました。

安田

へぇ、それはすごい!スタッフさんも増やさないと回せないですね。


藤村

仰るとおりです。仕事がどんどん増えていったので、人もどんどん増やして。最終的には40人くらいの組織になっていましたね。

安田

ははぁ、雇ったのはプロの電気工事士の方たちなんですか?


藤村

いやいや、素人ばっかり。ただ、仕事を教えて、資格も取らせて、そろそろ独り立ちしてもらおうという頃になると、みんな辞めていったんですよ(笑)。だからウチは「電気屋さん製造会社」みたいになってましたね(笑)。

安田

せっかく未経験から育て上げたのに、育った瞬間辞めていくなんて大変じゃないですか。果たして藤村さんはこのピンチをどう切り抜けていくのか…次回の対談が楽しみです!

 

 


対談している二人

藤村 泰宏(ふじむら やすひろ)
株式会社フジデンホールディングス 代表取締役

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1966(昭和41)年、東京都生まれ。高校卒業後、友禅職人で経験を積み、1993(平成5)年に京都府八幡市にて「藤村電機設備」を個人創業。1999(平成11)年に株式会社へ組織変更し、社名も「株式会社フジデン」に変更。代表取締役に就任し、現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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