雇用を緩める

正社員として人を雇用し、
家族も含めてその人生に責任を持ち、
その分しっかりと働いて会社に貢献してもらう。
昭和30年代から急激に増えた
会社と個人の生涯に渡る契約関係。
それが終わりを告げようとしている。

今や大企業は、雇ってしまった人材を
リストラすることに必死だ。
ピークを過ぎた中高年に
高額報酬を払い続ける余裕はもうない。
中小企業はなおさらである。
まず採用に莫大なコストがかかる。
育成にも手間暇がかかる。
ようやく一人前になったら辞めてしまう。

残った人材にも昔のような残業はさせられない。
有給休暇はきちんと消化させなくてはならない。
社会保険料の負担も大きい。
とてもではないが
社員の給料を上げ続けることなど出来ない。
それが現状なのである。

社員の側から見ても、
永久就職には過去ほどの旨味がない。
まず、同じ仕事をやり続けても給料が増えない。
いやむしろ減っていく。
残業が減り、休みが増えた分も報酬は減る。

毎日、同じ仕事をしていれば、
会社の利益には貢献できる。
だがスキルアップは望めないし、
会社は何の保証もしてくれない。
自分にはメリットがない。
それが社員の言い分だ。

ふざけるな!と言いたくなる
経営者の気持ちもわかる。
だが実際に社員がいなければ
仕事はこなせないし、利益も出せない。
報酬は増やせないが働いてもらわないと困る。
何とかモチベーションを保たせるしかない。
会社の側から見ても、社員の側から見ても、
負担ばかりが大きく旨味がない。
それが今現在の雇用契約なのである。

今までと同じやり方では、もはや成り立たない。
雇用という過去の常識を手放す時が来たのだ。
雇用をやめれば勤怠管理もいらなくなる。
採用も、育成も、評価も、
モチベーションアップも、必要ない。
では雇用をやめたら一体誰が仕事をこなすのか。

ここに新しい発想の組織が必要となる。
雇用というほど社内ではなく、
外注というほど社外ではない。
新しいカタチの契約関係。
それは今いる社員を
手放すところからスタートする。

解雇するのではなく、
雇用形態を緩めていくのである。
時間も勤務態度も管理せず、
その人にできる仕事を依頼し、
やった仕事に対して報酬を払う。

スキルアップしたければ自分で努力すればいいし、
稼ぎたければたくさん仕事を受ければいい。
嫌な仕事なら断ればいいし、
休みたければ休めばいい。
緩めるほどに強くなる。
それが次世代の組織。

 


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