人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。
第26回 経営者とスペシャリストの集中力の違い

藤原さんのメルマガの中に、「集中力を解除する能力」についての話がありましたね。ということで、今日は「集中力」について話していきたいなと。

集中力ってオンオフだけじゃなく、高低もありますよね。40~50%の集中力では「こなす仕事」はできても、大きな成果は生みだせない。「新たな価値を創造する」とか「90点からあと3点上げるための時間」みたいなフェーズでは、80〜90%の集中力が必要になる。

まさに仰るとおりで、Aという集中力を使っている状態で、Bの仕事はできない。つまり「商品開発」に集中しているときに、お客さんにプレゼンしようと思ったら、1回「商品開発」のスイッチを切らないといけない。それはまさに藤原さんのメルマガにあった「集中力を解除する」って話だよなと。

ありがとうございます。ただね、ちょっと矛盾するようですが、「ノイズ」も大事なんですよ。一つのことに集中すればするほど、集中度が増していって、ノイズを受け取れなくなる。逆に言えば「ノイズが排除された状態」を「集中」というわけですけど、実際のところ「ノイズから生まれるもの」もある。

そうそう。とはいえ、常にノイズだらけ=集中できていない状態じゃ仕事が進みませんから(笑)。つまりノイズを入れるために時々「集中力を解除」するわけです。プレゼン資料を作ったり、商品開発をしているようなすごく集中しているときに、一時的にふっと集中を解除するんです。

どちらもアリですよね。オフにしてぼーっとしてみるのもいいし、本を読んだり、散歩に出たりと、何か違うことをやってみるのもいい。そうやって意図的にノイズを入れることで、いいアイデアがパッとひらめいたりするんですよね。

ははぁ、確かにそういうことありますよね。…でも逆に、集中力を解除して、そのまま元の状態に戻れないこともありませんか? 私はそれが怖いので、基本的に集中するときは余計なことを一切入れないようにしてるんです。

そこまでの能力はありません(笑)。そもそもこの「集中力の解除」という考え方を始めたのも、「どうしたらもっと深く集中できるようになるだろう…」と試行錯誤した結果で。いろいろ実験する中で、バイクを少し走らせたり、靴磨きをしたり、庭の草むしりをしたり…という気分転換をはさむことで、さらに集中できるのを発見したんですね。

うーん、外部刺激を一切遮断するということはないですね。というのも、自社のスタッフと同じスペースで仕事をしていることが多いので、物理的に遮断することができない(笑)。実際、いつでも声を掛けてもらえるようにしています。

経営以外の仕事だとまた変わってきますよね。私が今やっている「ものづくり」や「価値づくり」の仕事だと、少なくとも90%くらいは集中してないと、ありふれたアイディアばかりになってしまう。つまり藤原さんのような状態に自分を置いておけないんです。
対談している二人
藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表
1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。