第37回 日本は「貧乏」ではなく「貧乏くさい」だけ?

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第37回 日本は「貧乏」ではなく「貧乏くさい」だけ?

安田

今日は「貧乏」と「貧乏くさい」の違いについてお話したいなと。というのも、昔から仕事仲間に「貧乏はしょうがないけど、貧乏くさいのはダメだ」とよく言っていたんです。最近になって、改めて「なぜ貧乏くさいのがダメなのか」を考えてみたくなって。


藤原

ほう、なるほど。確かに「貧乏」と「貧乏くさい」は同じようで違う感じがしますね。安田さんはどう考えているんですか?

安田

「貧乏」は今の状態、いわば“点”みたいなもの。一方で「貧乏くさい」というのは、未来に向かう“線”や“ベクトル”のようなものなんじゃないかと。


藤原

ああ、なるほど。そう言われてみると「貧乏」というのは現実的な状況で、「貧乏くさい」はその人のマインドセットや生き方そのものだという感じがします。

安田

そうそう。さらに言えば「貧乏くさい発想」を持っている人は、どんどん貧乏に向かっていくんだと思うんです。つまり「貧乏くさい発想」でいる限り、将来に渡って貧乏が続いてしまう。


藤原

ははぁ、非常に納得感があります。確かにそういう感じがしますよ。

安田

ちなみに藤原さんは普段「貧乏」と「貧乏くさい」を意識して使い分けてます?


藤原

いや、正直なところ、あまり意識したことはなかったですね。ただ、今話していて思ったのは「お金を持っていてもケチな人」っているなぁと(笑)。

安田

ああ、確かにいますね(笑)。無駄遣いをしないのではなく、なんだかケチくさい人。常に損得だけで判断していたり、ちょっとした贅沢すら許さないような。


藤原

そうそう(笑)。決して「貧乏」ではないんだけど、なんだか常に「貧乏くさい」というか。

安田

それでいうと、お金だけじゃなく時間についても同じことが言えますよね。「無駄なことには1秒たりとも時間を使いたくない」って態度を出されると、「ああ、貧乏くさいなぁ」と感じてしまいます。


藤原

同感です。時間やお金をどう使うかは、その人の価値観を映し出しますよね。

安田

そうですね。お金も時間も「何に使うか」が重要で。人生の終わりに「いい人生だった」と思えるかどうかが大事なんじゃないかと、最近つくづく思うんです。だからこそ、無駄なものを徹底的に排除した人生が果たして豊かなんだろうかと。


藤原

無駄や余白から生まれる豊かさや面白さもありますからね。むしろそういうことがキッカケで人生が素晴らしく変化したりする。…とはいえ自分自身を振り返ると、両親が節約家ということもあって、節約を美徳としていた時期もありました。

安田

なるほど。まぁ、時代的なこともありますよね。国全体がそういう風潮でしたから。


藤原

確かに「清貧」のような思想も強かったですからね。でも私はどこかのタイミングで、それではカッコよくないなと思ったんでしょう。「武士は食わねど高楊枝」なんて言葉がありますけど、貧乏くさい人って一緒にいても心地良くないし。

安田

なるほど(笑)。ちなみに変化したキッカケは覚えています?


藤原

そうだなぁ。高校時代にお金の使い方が大胆な先輩に出会ったことが大きかったのかもしれません(笑)。その先輩はよくいろんな人にご馳走したりしていたんですけど、決してお金が余ってるからというわけではなくて。

安田

確かに、めちゃくちゃお金持ちというわけじゃないし、見返りを求めているわけじゃないけど、すごく気持ちよくご馳走してくれる人っていますよね。


藤原

そうなんです。その出会いのおかげで、なんとなく「貧乏くさい」の基準ができた気がします。話していて気付きましたが、「人のためにお金を気持ちよく使えるかどうか」が大事なのかもしれないですね。

安田

なるほどなぁ。そういう人って、「自分のお金なのに自分のものと思っていない感じ」がしますよね。お金は「天下の回りもの」じゃないですけど、どこか社会の一部だと捉えている。


藤原

お金が概念でしかないことを理解しているんでしょうね。お金そのものには価値がなくて、価値あるものと交換することで初めて意味が出てくる。そういう感覚を本能的に理解している人が、「貧乏くさい」とは対極にある気がします。

安田

お金も時間も、何かと交換してこその資産ですからね。そのままでは意味がない。お金がない、時間がないという人ほど、そこに固執しているというか、縛られている気がします。


藤原

まさにそうですね。最近の若い人って、「自分の時間やお金を他人に使いたくない」と考える人が多いと思うんです。もちろんそれは間違ってないんですけど、他人のために時間やお金を使えるかどうかも大事な気がして。例えば後輩が沈んでいたらご飯に誘う、みたいなことができるかどうか。

安田

確かに確かに。全部の時間やお金を人のために使った方がいいとは思いませんけど、全体の5%くらいは共有財産のような発想があってもいいかもしれませんね。その方が豊かになっていく気がします。


藤原

そう考えると、最近よく聞く「日本が貧しい」という話も、根拠のない思い込みなのかもしれませんね。

安田

海外の富裕層ばかり見てるから羨ましく感じてしまうだけで、他にもっと大変な国はありますからね。そう考えると、日本に生まれただけでとても超ラッキーじゃないかと思いますよ(笑)。


藤原

全くその通りですね(笑)。こんなに幸せな話はないですよ。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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