第40回 世代交代こそが未来を切り開く

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第40回 世代交代こそが未来を切り開く

安田

今日は「世代交代」についてお話したいなと。日本では特に、世代交代がなかなか進まない状況が続いていますよね。「会社の中」もそうですけど、「会社自体」もそうで。昔ながらの会社がいまだにトップだったりする。


藤原

日本は特にそうですよね。アメリカなんかは、もう完全に入れ替わっている感じがしますけど。

安田

そうなんですよ。政治の世界でも芸能の世界でも、「ドン」と言われてる人がずっとその位置にいることが多い。ところでちょっと話が逸れますが、爬虫類って老化しないって知ってました?


藤原

そうなんですか? それは初耳です!

安田

例えば、カメやワニ、トカゲなんかを見ても「おじいちゃん」という感じがしませんよね。爬虫類は細胞の代謝が非常に活発で、ずっと若々しい状態を保ってるそうなんです。もちろん、外敵に襲われたら死んでしまいますけど、基本的には自分の寿命まで元気で若々しいままなんですって。


藤原

なるほど、それは驚きです。でもそれでいうと、哺乳類は違いますよね。見るからにヨボヨボした象とか牛を見たことがあります。

安田

哺乳類は進化の一つの戦略として、老化を「選んだ」生物らしいんです。老化をすることで、ある程度の年齢に達したら次の世代に交代するように促せるので。


藤原

ははぁ、なるほど。もし老化しなければ、ずっと生き続けることができる代わりに、進化の速度が遅くなってしまうんですね。つまり、世代交代のスピードが進化のスピードに影響すると。

安田

仰るとおりで。実際、初期の哺乳類は小さなネズミのような生き物で、ものすごく寿命が短かったと言われているんです。だからこそ世代交代がどんどん進んで、進化のスピードも速かった。


藤原

あえて老化することで、次の世代にどんどんバトンタッチしてきたわけですね。面白いなぁ。同じ哺乳類である人間も、老化を選んで進化してきたということですか。

安田

理論上はそうです。どんなに頑張ったところで、200歳までは生きられない。今は多くの人がアンチエイジングに必死で、いつまでも若くいようと頑張っていますけどね。


藤原

確かにそうですね。若さや権力への執着は現代の大きなテーマかもしれません。でもそれって、自然の摂理に逆らっているとも言えますよね。

安田

肉体的には老化を受け入れているのに、精神的にはそれに逆らおうとしているというか。人間は他の動物と違って脅威になるような敵がいないので、進化しなくても特に困らない。だったらもう「老化戦略」は終わりでいいんじゃないの、ということなのかもしれません。


藤原

なるほど、面白い視点ですね。ちなみに私自身は若さや権力に固執するタイプじゃないんです。だから権力にしがみつく政治家なんかを見ると、「なんでそこまで執着するのかなぁ」と不思議で。

安田

それでいうと、最近、木を見ていてふと思ったことがありまして。人間を木で例えると、葉っぱだと思うんです。木は人類そのもの。新しい芽が出て大きくなって、紅葉してやがて枯れていく。そしてまた新しい芽が出て、ということを繰り返して木が成長していく。


藤原

ははぁ、なるほど。葉っぱがいつまでも残っていてはダメだと。むしろ人類全体の目線で考えれば、葉である人間がどんどん枯れて落ちていった方が成長する。

安田

そういうことです。個人で考えるといつまでも若くありたいとか、充実していたいと考えてしまう。でも人類全体を考えると、正しく世代交代していくことがあるべき姿なんじゃないかと。


藤原

確かにその通りですね。人間も木のように新陳代謝を繰り返していくべきだと。

安田

そうなんです。だからこそ、世代交代そのものが「善」だということを根底に持っていないと、生物としてよくない気がして。


藤原

それは同感です。今安田さんとこうして一緒に活動できているのも、世代交代してきたからこそなわけですから。坂本龍馬や徳川家康が今でも現役バリバリだったら、僕たちの世代にはチャンスなんてなかっただろうなと(笑)。

安田

そうですね(笑)。世代交代があったからこそ、今の私たちがいるわけで。


藤原

命を永らえることが目的ではなく、自分の人生で何を成し遂げるのかが大切なんでしょうね。「使命」を見つけて、それに自分の命を使うことが重要なんだと思います。

安田

葉っぱ一枚一枚も、木を大きくするためにできるだけ自分が成長しようとします。でも一番大事なのは、枯れてなおしがみつかないこと。次の若い芽が出てきやすいよう譲ることが最大の社会貢献なんですよね。


藤原

いやぁ、すごく深いですね。成功した経営者たちでさえ世代交代がうまくいかないのは、その観点が欠けているからなんでしょうか?

安田

そうだと思います。自分がやったほうがまだうまくいくと信じているから、なかなか手放せない。けれども、長期的に見ればどんどん世代交代していくことが重要で。そういうことを理解している経営者が増えていくといいんですけど。


藤原

そうですよね。自分がやった方が業績を残せると考えてしまうのは、短期視点だからこそなんでしょうね。

安田

そもそも「業績がいい方がいい」という価値観自体が、次の世代では変わっているかもしれませんからね。


藤原

確かに。世代交代を繰り返す中で、そんなことはどうでもよくなっているかもしれません。

安田

豊かさの定義なんて、世代によってどんどん変わっていくでしょうからね。現に、上の世代と我々でもだいぶ違うわけですから。

藤原

資本主義の価値観も、これからどう変わっていくのか分からないですしね。

安田

そうですね。結局、何が本当に豊かなのかは、私たちの世代が決めることではなく、未来に任せるべきだと思います。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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