我慢の代償

日本は先進国で最も生産性の低い国である。
そして自分の会社や仕事を好きではない人が
最も多い国でもある。その率はなんと7割に近い。

生活のために嫌なことも我慢して
定年まで真面目に働き続ける。
その結果が先進国最低の生産性と報酬額である。
いったい何のためにこんなことをしているのか。
そろそろ真剣に考えたほうがいいだろう。

仕事とはそもそも辛いものだ。
それを我慢することによって報酬は得られる。
立派な社会人とは、
会社や仕事への不平不満を漏らさず、
言われたことをしっかりやり遂げる人だ。

そう教えられ、忠実にその教えを
守り続けてきた結果がこれである。
もうそろそろ認めてもいいのではないか。
これは間違いであったと。

嫌な仕事を我慢してやり続ける集団と、
やりたいことを率先してやり続ける集団。
どちらの生産性が高くなるかは子供でもわかる。
そして結果もまた、その通りになっているのである。

我慢して働き続けた結果、
生産性は下がり報酬は頭打ちになった。
しかし税金や社会保険料は上がっていく。
名ばかりの昇進を受けたところで仕事がキツくなるだけ。
増える報酬は微々たるものだ。

これなら出世しないほうがマシ。
出世は諦めストレスがかからない程度に働き、
得られた報酬の中で質素に生きていこう。
こういう若者が増えていくのも当然なのである。

これから先も人を雇って利益を上げたいのなら
価値観を180度変えなくてはならない。
いかに楽しく社員に働いていただくか。
これを真剣に考えなくてはならない。

出世や報酬を諦めてでも嫌な仕事はしたくない。
これを言い換えると
「楽しく仕事ができるなら報酬は安くてもいい」
ということになる。
やりがい詐欺という言葉もあるが、
じっさい働いている本人が満足しているのであれば、
詐欺でも何でもない。これは正しい経営戦略なのである。

人を雇う経営者は
利益の源泉が変わったことを理解すべきだ。
我慢の代償が会社の利益になったのはもう過去のこと。
我慢させるために高い報酬を払い、
それでも離職が増えて採用コストが上がり、
仕事のパフォーマンスが下がる。
我慢の代償は会社の赤字なのである。

反対に、仕事が楽しければ離職は減り、
採用コストは下がり、仕事のパフォーマンスは上がる。
しかも報酬は上げなくてもいい。
いかにして我慢させるかではなく、
いかにして楽しませるか。ここを理解できない
経営者はもう退場するしかないだろう。
 

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