人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。
第64回 会社の都合と、社員の本音

今日は「社員の本音」という視点でお話を伺っていきたいんです。たとえばある日突然「辞めます」と社員さんが言ってきたら、「そんな気持ちになる前に相談してくれればよかったのに」って経営者は思うじゃないですか。

典型的なパターンですよね。社長が短気だったりすると、社員はだんだん社長の顔色を伺いながら仕事をするようになる。機嫌を損ねたくないから、どんなことにも笑顔で「ハイ!」と答えるわけですよ。すると社長は「皆やりがいを持って楽しく働いてくれているなぁ」と勘違いしてしまう。

これも「鶏が先か卵が先か」みたいな話になっちゃうんですけど、そういう状況にならないように普段から意識をするのが重要で。一時「心理的安全性」みたいな言葉が流行りましたけど、「本音を言っても大丈夫」という雰囲気をどう作れるかだと思いますね。

前提として意識してもらいたいのが、「社員の立場で考える」ってことですよね。とかく経営者は「会社にとってどういう社員であって欲しいか」で考えてしまいますが、その視点を「この社員さんはどうありたいのか」に変えるというか。

そういうことです。例えばね、「ウチは個人面談もしっかりやっている。だから大丈夫だ!」という社長さんもいるかもしれませんが、その面談で会社の思惑を押し付けていませんか? ということなんです。社員さんの本音をちゃんと聞けてますか? っていう。

そうかもしれませんね(笑)。ただ、繰り返しになりますが、彼らの要望をそのまま取り入れましょうって話ではないんですよ。あくまで「社員の考えていることをしっかり把握しておこう」ということでしかなくて。

そうそう。そういう意味では「1人も辞めさせない」みたいに縛る必要もないと思いますね。それは単なる結果でしかなくて、先ほど言ったように、社員が本音で働ける環境をいかに作っておくか、の方がずっと重要です。

ええ。明確なキャリアパスがあることで頑張れる人もいれば、レールのない道を自分で切り拓きたいという人もいます。大事なのは「この会社で働いている自分をどう感じているのか」を聞ける場を作っておくことだと思います。
対談している二人
藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表
1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。