第27回 企業が社員の働き方をオーダーメイドする時代

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第27回 企業が社員の働き方をオーダーメイドする時代

安田

中辻さんはMAMENOKI COMPANYの経営に加えてペイント王の社外取締役も兼任されているわけですが、ものすごい忙しさだと思うんですよね。主婦業と経営者、いったいどうやって両立しているんですか?


中辻

そうですねえ。まずは家族に大きく助けてもらっているのは大前提なのですが。その上で、仕事をする時間をキッチリ決めるようにしています。

安田

仕事とプライベートをしっかり分けるんですね。


中辻

はい。私はいつも6時半頃までしか会社にいないんです。終わらせたい仕事があったとしても、6時半になったら一度帰宅します。

安田

会社に残って残業するなんて、ありえないですか?(笑)


中辻

そうですね(笑)。やっぱり何よりも娘との時間も大切にしたいので。だから7時前には帰宅して、娘とご飯を食べたりたわいもないお話をしたりしてます。

安田

お家に帰ったら、もう一切仕事はしないんですか?


中辻

いえいえ、しますよ。だいたい夜9時頃になると娘もひとり時間を楽しみ始めるので、そこから家のパソコンで仕事を再開しています(笑)。

安田

娘さんって、今おいくつでしたっけ?


中辻

もうすぐ18歳です。

安田

そうすると中辻さんがMAMENOKIを始めた頃は、まだかなりの場面で日常生活の面倒をみてあげなきゃいけない年齢でしたよね。


中辻

そうですね。当時はちょうど娘が中学生になった頃かな。

安田

会社経営と子育てなんて、どうやって両立していたんですか? 大半の人は、そんなの絶対ムリだって言うと思うんですけど(笑)。


中辻

笑。やっぱり何よりもまず、周りのサポートが必要ですね。全部1人で完璧にやろうとしても、それは絶対ムリなので。

安田

自分を助けてくれる人、つまり味方になってくれる人を作ることが重要というわけですか。他にはなにが必要ですか?


中辻

仕事のタスク管理も重要になってくると思います。

安田

タスクに優先順位をつけるとか?


中辻

仰る通りです。確かに、その日にやりたかった仕事を100%終わらせるのが理想です。でも私は娘との時間も大切にしたかった。となると必然的に「この仕事って絶対今日やらないとダメ? 明日でも大丈夫じゃない?」と自問せざるを得ないんです。

安田

なるほどなぁ。お子さんと過ごすことを最優先にして、それ以外の時間で効率よく仕事をこなしていったわけですね。


中辻

はい。今も変わらず、そういうお仕事の仕方をするように心がけています。

安田

この対談の読者さんの中には、子育て中のママさんや主婦の方々も多くいると思います。そういう方々から「私も中辻さんのように、忙しい生活の中でも頑張って仕事をしてしっかり稼ぎたい」と言われたら、どんなアドバイスをしますか?


中辻

そうですねぇ…。その気持ちをしっかり理解してくれる会社に勤めましょう、とお伝えするかな。

安田

「子育てと仕事を両立したい」という気持ちを理解してくれる会社、ということですか?


中辻

はい。そもそも私は、子育て・仕事・家庭のこと、どれか1つでも無理をしている状況だと、絶対に長く続けられないと思っているんです。

安田

確かに、無理が続くと、どこかしらに歪みが出てしまいますよね。


中辻

ですよね。例えばどうしても仕事が休めないのに子どもが熱を出した場合。私も若い時は、子どもに解熱剤を飲ませて無理やり熱を下げて保育所に連れて行っていましたけど…。

安田

でも結局、お昼すぎに「熱があるからお迎えにきてください」って保育所から連絡がくる。子育て中のあるあるですよ、それ。


中辻

仰る通りです。子どもにかわいそうな思いをさせているのはわかっているけど、仕事も休めないし…。こういう「無理な状態」では、何事も長く続かないですよね。

安田

じゃあその「無理な状態」を解消するために、働く側はどうすればいいんでしょうか?


中辻

働く側というより、採用する側が変わるべきだと思います。この人を採用したいと思うなら、その人に合った柔軟な働き方を用意してあげればいいんですよ。

安田

働く人に合わせて、勤務形態をオーダーメイドするようなイメージですか?


中辻

そうですそうです。就業時間や働き方はあなたの希望に合わせるので、ぜひウチで働いてくださいと。そうすれば、これまで子育てや家庭の事情で働ける場所がないと諦めていた優秀な主婦層が集まってくると思いますよ。

安田

なるほどなぁ。今、人材不足で困っている企業がたくさんありますけど、勤務時間や働き方などの工夫次第では、中辻さんのような優秀な人材を採用できる可能性もあるというわけですね!


中辻
笑。きっとしっかりした人材が採用できると思います!
安田
杓子定規な勤務形態にこだわらず、個々人に合わせた働き方を提案する。そういうちょっとした工夫が、企業側・働く側、双方にとって大きなメリットをもたらしてくれるんですね。

 


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

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1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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