第84回 60万円の修学旅行費用を、自分で稼ぐという教育

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第84回 60万円の修学旅行費用を、自分で稼ぐという教育


藤原

つい先日メルマガにも書いたんですが、私の妹はアメリカに住んでいて、子どもが二人いるんですね。毎年夏になると日本へ帰ってくるんですが、その甥っ子からお金に関する面白い話を聞いたんです。

安田

へぇ。アメリカ在住のお子さんの話ですか。価値観や文化の違いもあるでしょうし、興味深いです。


藤原

そうなんです。甥っ子は現地の中学生なんですが、修学旅行の費用がなんと3000〜4000ドル。日本円で60万円近くになるらしいんですよ。

安田

ええ! めちゃくちゃ高いですね! 中学生の修学旅行にしては驚きの額ですよ。


藤原

でしょう? 当然、どの家庭でも払える金額じゃないから、全員参加じゃなく「行きたい人だけが行く」という仕組みなんだそうで。

安田

なるほどなぁ。日本だと「行けない子が可哀想だ」って炎上しそうな話ですね。


藤原

そうそう。でね、妹はというと、教育の一環としてその費用を甥っ子自身に稼がせてるんです。クラウドファンディングで旅行の意義を訴えて支援を募ったり、リサイクル資源を集めて換金させたりして。

安田

へぇ、面白い! 私もオレゴンにいた頃、芝刈りとか洗車を近所の子どもにやってもらいましたよ。「やらせてほしい」って本人が訪ねてきて。


藤原

ああ、まさにそれで、甥っ子も「洗車させてください、20ドルで」って言って回ったらしいんです。でも20ドルって金額を提示すると断られることもあって。それで編み出した方法が「いくらでもいいからお手伝いさせてもらえませんか。僕、修学旅行のお金を稼ぎたくて」と言うんです。そうすると、大抵はなにかやらせてくれる。

安田

ああ〜、わかる気がします。目的を知るとお金も出しやすくなりますよね。


藤原

そうなんですよね。明確な目的に向かって頑張って洗車してくれた子どもに、1ドルとか5ドルとかってちょっと払いにくい。結果、だいたいは20ドルから30ドルくらいはもらえて。中には100ドルくれた人もいるそうなんです。

安田

は〜、なるほどなぁ。確かに「修学旅行のため」なんて言われたら、それくらいは出してあげたくなるかもしれない(笑)。


藤原

ある意味、「子ども」っていう武器を使って商売してるとも言えますけどね(笑)。ともあれ「稼ぐ」ということを楽しみながら学んでいるのが素晴らしいなぁと思ったんですよ。

安田

私は大賛成ですね。というかそれ以上に大事なことなんてないだろうと思いますよ。本来は日本の教育だって、生きていく能力をつけるために受けさせているわけじゃないですか。お金儲けなんて資本主義社会の中では、一番必要な能力ですから。


藤原

安田さんも以前、「子どもにはお金の教育を積極的にした方がいい」と仰ってましたもんね。

安田

ええ、実際うちの息子についても、「自分の特性を活かして稼ぐ方法」を教えていこうと思っています。自分の得意なことで誰かの役に立つと、それがお金で返ってくるんだよと。それで小学生になったら、自分の稼いだお金は自由に使っていいよ、という形にしようと。


藤原

素晴らしい。人の役に立つことが対価につながるっていうのが、商売の本質ですもんね。うちも息子たちにはそう話してきました。「世の中により多くの貢献をした人がより多くのお金を稼ぐのだから、お金持ちの人には敬意を持とうね」と。

安田

ええ。逆に言えば、社会に貢献しない・役に立たないことでは稼げない。家でも「自分が散らかしたおもちゃを片付けてもお金にはならないよ。人の役に立ってないからね」と教えてるんです。これをまずは家の中で練習させて、いずれは外で「外貨」を稼げるようになればと。


藤原

いいですねぇ。子供たちがお金を稼ぐことに対してポジティブなマインドを持って、「自分も社会の役に立って報酬をもらいたい!」と思ってくれたら最高ですね。

安田

いや本当に。私も実際、3~4歳くらいのお子さんにYouTube用の「ツッコミの声」を発注したことがあるんですよ。「また怒られるよ!」とか「バカじゃないの!」とか、大人が言うといやらしいけど、子どもだと可愛いし効果的なんです。


藤原

は〜、それは面白いですね。すごくユニークな仕事だなぁ。そうやって、どう楽しくお金の教育をしていけるかが大事なんでしょうね。

安田

そうそう。もっと遊び心を持って教えていかないとダメだと思いますよ。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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