人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。
第86回 「やりたいこと」より「やるべきこと」を先に考えるべき理由

少し前にメルマガで「やるべきこと」と「やりたいこと」の順番が大事だ、と書かれてましたよね。この対談でも「やりたいことをやるのが基本」といつも話してますけど、それと「やるべきこと」に順番があるという発想がおもしろくて。

そう思います。ただ一方で、「好きなこと」を仕事にしているはずなのに、なぜか食えない、という人も世の中には大勢いる。素晴らしい絵を描くのに全く売れないアーティストとか、超絶的な技術を持つのに自己満足で終わってしまう職人とか。

ここで冒頭の順番の話になるんですが、「やるべきこと」を差し置いて、自分の「やりたい」という気持ちを優先すると、どうしても思考が自己中心的になってしまう。それでは残念ながらお金には繋がらないわけです。だからこそ、まず「やるべきこと」は何かを考える必要があって。

そうなんです。だから「社会は今、何を求めているのか?」「自分はどんなことで人の役に立てるのか?」をまず考える。その「やるべきこと」の範囲の中で、自分の「やりたいこと」を見つけていく。この順番が大切なんだと思います。

なるほどなぁ。やりたいことだからと一日中ゲームをやっていても、全くお金は入ってこないわけですよね。YouTubeで流したらお金が入ってきたのは偶然じゃなくって、それを見て楽しいっていう方がいたからなわけで。

そうですそうです。でも、ゲームで楽しんでいるうちにYouTubeで稼げるようになるなんて、宝くじ3億円当たるのと同じくらいの運がないと難しいわけです。偶然それができている人もいるけれど、それは超レアケースだと思ったほうがいい。

ふむふむ。「自分がどう役に立てるか」というアンテナを立てておいて、そこでキャッチしたもののなかから「やりたいこと」を見つけるという順番が正しいと。そうすることで初めて、やりたいことと稼げることが一致する可能性が出てくる。

例えば、今の日本が抱える大きな課題として、「少子高齢化」がありますよね。国が豊かであり続けるためには、一人ひとりの生産性を高める必要がある。例えばその中で「付加価値の高い人材を育てるという分野なら、自分はどんな貢献ができるだろう」と考えるとか。

まさにそういう視点ですよね。そしてもう一つ大事なのは、その「やるべきこと」を、決して他人に決めさせないということです。たとえ会社員であっても、上司に言われたことをただこなすのではなく、一度自分で咀嚼することが重要なんです。

ええ。そのプロセスを経て初めて、「やるべきこと」が「やりたいこと」になり、それが「稼げること」と一致してくる。多くの人がつまずくのは、この順番を間違えて、自分の「やりたい」からスタートしてしまうからなのかもしれません。
対談している二人
藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表
1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。