その126 カワイイ カワイイ

ここ数年、心身ともに中年期から初老へ移行し、
自分がオシャレをしようという心算はもはや希薄なのですが、
一方でラクに過ごしたいとはつねづね思っており、
気づくと太ももがくっきり日焼けするほど
何ヶ月かの間、会社の勤務時間以外は短パンしか履いていません。

先日、そんな普段着、部屋着をすこし買い足そうかと
家の近場のアウトレットに出かけ、
大手スポーツメーカーのストアを見回っていたときのことです。

スニーカーのコーナーで、
ハタチくらいのなかなか男らしい風貌の若者が数名、
陳列物を前にアレコレ、友だち同士で論評しあっていました。

「…これ、カワイくね?」
「ああでもこっちもカワイイかも」
「オレはこれのがカワイイ気がする」

……???

若者の会話ですので、使われる言葉がかなり偏っていることは
当たり前なのでしょうが、わたくしがそこにいた1、2分の間に、
誇張抜きで10回くらいの「カワイイ」が飛び交っておりました。

30歳くらいの人を「若い人」に分類してしまう初老からすると、
文字通りの若者が自分と異なる世界に生きていることは重々承知しております。

趣味でヴィジュアル系バンドをしているとかではない男性でも、
一般的なファッションとして、ピアスをしたりメイクをしていたりということも
今はそういうモンなんだろうな、と受け取っています。

ですが、その根底には「モテるため」というのが前提としてある、
とも思っています。
世の中が10年、20年、100年経とうと、若い男性が身なりをいじくる動機は
「モテるため」以外には原則的にありえないからです。

われわれの世代で「ワイルド」だとか「(ちょっと)悪そう」だとかが
モテのために有効なイメージであったように、現在の若者の世界では
ユニセックスに寄せているほどセックスアピールになるのではないか、
と少し皮肉な目で見ているところもあったのです。

しかし、そのスニーカー売場では、彼らのグループに女性はいません。
会話で女性と親和性を高めるため、女性に目線を近づけるために使われるのではなく、
彼らはかつての「カッコいい」や「イケてる」に近いニュアンスで
「カワイイ」
を連発していたのです。

もちろんそこに意図はないのでしょう。
意図がなく、無意識に出るコトバだからこそ、
それはわたくしたち世代が子どもや動物などに限定的に使う「可愛い」とは
外観が同じでも、質的にはけっして同じになりえない表現なのです。

「カワイイ」が自分にとってどんな性質の言葉か、
もしかしたらそれは世代的な立ち位置を測るためのモノサシなのかもしれません。

 

 

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著者自己紹介

「ぐぐっても名前が出てこない人」、略してGGです。フツーのサラリーマン。キャリアもフツー。

リーマン20年のキャリアを3ヶ月分に集約し、フツーだけど濃度はまあまあすごいエッセンスをご提供するカリキュラム、「グッドゴーイング」を制作中です。

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