十数年前、あるフリーのプログラマーの方が、自分のブログで興味深い実験を行っていました。それは、
「24時間英語漬けの毎日を送っていれば、英語が習得できるのではないか」
という試みです。
当時は有名プロゴルファーが広告塔になって、聞き流すだけで英語が覚えられるようになるという教材が人気を集めていた時期だったと思います。そのプログラマーの方は、当時は珍しかった在宅仕事という環境を生かして、そういう試みを行ったようでした。
そして、結果としては、あんまりうまくいかなかったようです。
まあ、その方の年齢が当時で40代後半くらいで、語学という目的に合致していない可能性もありました。
ただ、わたくしがいえたことではありませんが、世間というのはとかく良し悪しの評価をする方に回りたがるもので、自分が汗をかいて実行に移してみる人はきわめて少数派です。
結果はともあれ、身銭を切って実験し、記録を残したということにはそれだけで一定の価値があると思います。
その方の場合、TOEICで実力評価を受けていたようですから、「聞きまくる系のアプローチは総合的な英語力にはつながらなかった」という一例を示した、ともいえます。
また、わたくしが所属している会社では、コロナ渦以降、事務所で電話やPC越しに英語を話す人がかなり増えました。
それは、社内の体制が変わったり、WEB会議が一般化したりしたこともありますが、なにより国外の人と直接コミュニケーションを取る機会が増えたことによります。
それを担当している人たちは、みなさん若者ではないですが、言語的なコミュニケーションに難儀している例はあまりないようです。
会社による英会話の研修サポートなどもありますが、そこでの英会話がふつうに機能している理由は、みたところ2つあります。
ひとつは、相手もネイティブでないこと。正直、会社の人がしゃべる英語はすべてカタカナですが、非ネイティブ相手であればほとんど気にする必要がなさそうです。
もうひとつは、こちらの方がはるかに大きい理由ですが、ビジネスであること。
個人的に、仕事場で普段使っているボキャブラリーの乏しさはひどいものですが、それは誰しも同じで、その状況は言語が変わろうと同じなのです。
ビジネスで言葉は文化ではなく、小道具にすぎません。
というわけで、
「ひとつの語学を『習得』するのはとても大変だけれど、ツールとして『利用』するだけなら誰でもまあまあイケるのでは」
というのが、現時点の結論でございます。