その69 暗黒時代

エンタメ動画で「ゲーム実況」というジャンルがあります。
文字通り、ゲームをしている様子自体を動画コンテンツとしているもので、
トップ級の人気がある人であればかなりの収入を得られるのだそうです。

中年以降の人間にとって
自身が成人してから出現した職業やジャンルというのは、
eスポーツとかユーチューバーとかと同じで、
なかなか体感的に理解しづらいものがあります。
「それで金稼げるの?」「どうしてそんなに人集まるの?」
という風に、自分の常識と照らして反射的に感じてしまうのですよね。

とくに、ゲーム実況はプレイされるゲームの画面を見ている「だけ」なので、
どこにおもしろいところがあるねん、とつい思ってしまうのですが、
そこは、評価を得ている人の場合、
トークとプレイを巧妙に混ぜあわせて
きちんとエンタメとして成立するクオリティがあります。

太古の昔、われわれが子供のころ、
友だちの家でゲームで遊んでいるはずが
プレイの順番が回ってくる以外の時間は
「見ててもちっともおもしろくねえ……マンガでも読んでるか……」
になった、アレとは違うのです。

(今の子供は集団でいても、全員自分のスマホかゲーム持ってるから、
関係ないんでしょうけどね……)

さて、そんなようにゲーム実況はゲームをすることとはまた別物なので、
実況者のスキルがあれば知らないゲームでも関係なく楽しめます。
むしろ、自分では一生存在を知ることもないような
低予算で作られたユニークなゲームを見ることもあります。

最近では、テーマが「昭和に引き込まれる…!!」という
ホラーゲームが秀逸でした。
ホラーなのでプレイヤー/作中の主人公が自分の意志とは関係なく
どこかに引きずりこまれたりするのですが、
その先が「闇」とか「地獄」とかでなく、「昭和」なのです。

元号といえばいまや社会的役割が縮小し、
公的書面でもなければわざわざ持ち出す機会もないでしょうが、
現在の令和になることで発生した主要なインパクトのひとつは
「昭和」を正式に歴史の一部にしたことでしょう。
昭和が「前」から「前よりも昔」になったことで、
明治大正と同じく相対化の対象になったわけです。

それは、少なくともゲームのプレイヤーであろう若い層にとっては
未知の世界であり、いまの常識が通じるか怪しい世界であり、
そこから派生して恐怖を感じることまでありうるのでしょう。

たしかに、数十年前までの常識だけでも
タバコは吸えないところの方が少なかったし、
ジェンダーはおそろしく強固なものだったし、
新入社員は決死の覚悟で飲み会に参加することが前提だったり、
現在の若者からすると
恐怖としかいいようのない社会習慣がたくさんあったのも事実です。

しかし、過去と現在両方の体験のある人間にとっては
「知らないということで暗黒時代にみえるのか…」という、
不思議な驚きを感じないでもないのです。

まあ、
年長者が若者に「いまどきの若者は…」というフレーズを永遠に繰り返すように、
過去がそんな風に感じられるのは人間のサガなのかもしれません。

ちなみに、ゲームの中の主人公(女の子)は
「トイレが和式だったこと」
におののいていました……
 

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著者自己紹介

「ぐぐっても名前が出てこない人」、略してGGです。フツーのサラリーマン。キャリアもフツー。

リーマン20年のキャリアを3ヶ月分に集約し、フツーだけど濃度はまあまあすごいエッセンスをご提供するカリキュラム、「グッドゴーイング」を制作中です。

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