#002 数文字となりに、答えはあるのかも。
ネーミングを
考えていくにあたって、
難しいなと思うのは、
ありきたりだとつまらない。
でも斬新すぎると伝わらない。
ということです。
商品やサービスをイメージさせながら、
なんだかこれまでとは違う、
と相手に感じさせる
さじ加減が必要になってきます。
少し前のことになりますが、
ある人材採用系の会社さんに、
『採用フィッティング』という
サービスネームを提案したことがあります。
ネーミングのヒントとなったのは、
社長さんのこんな話でした。
「うん。うちは、たしかに
採用マッチングの会社なんだけど、
ナビみたいに機械的に
やっていくんじゃなくて、
もうちょっと人に寄った温もりのある
サービスを提供しているんだよね」
いかにも面倒見の良さそうな
社長さんの話しぶりを聞きながら
浮かんできたのが、
フィッティングという言葉でした。
フィッティングfittingは、
ご存知のように
オーダーメイドの洋服や靴、
ゴルフクラブなどを
購入する際に使われます。
マッチングmatchingとは、
わずか数文字の違いで、
言葉の響きもとても似ていますが、
フィッティングの方が
ずっと人の手と温度を感じます。
言葉とは、不思議なものです。
このようにして生まれた
『採用フィッティング』ですが、
グーグルで検索したところ、
同業他社で使用しているところもなく、
自信を持って提案することができました。
世の中にすでにあるネームを活かして、
それまでにない新しいネームを
生み出している例は、
わたしたちの身近に結構あります。
例えば、『Wi-Fi』。
ネーミングを考案した
インターブランド社によれば、
Wi-Fiは、当初“IEEE 802. 11”という
技術名称に過ぎなかったとのこと。
「世界のどこでも見かけることができるような、もっと覚えやすい名前が必要でした。インターブランドが開発したネーミング案から彼らが選んだWi-Fiという名前は、“High Fidelity”の略である“Hi-Fi”に着想を得ています。ワイヤレスでありながら、どこへ行っても接続が途切れることが無い、IEEE 802.11の技術の高品質さを反映したネーミング、それがWi-Fiなのです。」(インターブランドジャパン ウェブサイトより)
いまは、流し読みの時代なのだと思います。スマートフォンの画面に絶え間なくあふれゆく情報を、ふふんと横目で眺めながら、中指でびゅんびゅんスライドさせていく。このような時代において、自社の社名や商品やサービスに、ユーザーの目を止めさせ、あわよくば記憶に留まらせるフックとして、ネーミングの役割がますます重要になっていると感じます。とはいえ、名前は誰でもつくれるっちゃつくれるわけで、ネーミングを生業としている者にとっては、専門家としての視点や考え方が問われている時代でもあります。そんなわけでありまして、ネーミングにまつわることをいろんな場所から、掘ってみようと思っています。