日曜日には、ネーミングを掘る #018 iPhone

美術家は、
炭鉱におけるカナリアのような存在だ。

カナリアたちが酸素の欠乏を
いち早く知らせてくれるように、
美術家たちは社会が直面する危機を、
作品を通して私たちに伝えてくれる。

それは何かを知りたいというのが、
私があちこちの美術展や展示会に
足を運ぶ理由のひとつなのだけれど、
ここ10年ほどの間の傾向として
はっきりしているのは、
廃棄物を扱った作品が
とても多くなってきているということだ。

私はこれを
「この地球上に、これ以上モノは必要ない」
という美術家たちからの
メッセージだと受け止めている。

そして、美術家たちが
メッセージを積極的に発しはじめた
まさにそのタイミングで誕生したのが、
iPhoneだった。

2007年6月29日、
初代iPhoneが発売されて以来、
それまであたりまえのように使っていた
多くのモノが必要なくなった。

私の生活と仕事の周りでさえ、

・固定電話
・カメラ
・ビデオカメラ
・ICレコーダー
・時計
・PCとキーボード
・カーナビゲーション
・音楽・映像ソフト&ハード
・地図帳
・書籍や雑誌
・電話帳や住所録
・メモ帳
・写真・アルバム
・クレジットカード
・取り扱い説明書
・チケット
・クーポン券

と、枚挙にいとまがないほどであるが、
このリストは今後も増え続けていくだろう。

スティーブ・ジョブズが
iPhoneの開発にあたって、
「環境」のことを考えた
という記録は残っていない。

しかし、いまから振り返ると
iPhoneの登場は、
まさに歴史の必然だったように思えるのだ。

感想・著者への質問はこちらから