日曜日には、ネーミングを掘る ♯093 Timee(タイミー)

今週は!

2019年最後のブログ更新となりましたが、1年間おつき合いいただいたみなさま、どうもありがとうございました。年内ラストのテーマ。さて、なにを掘ろうかしらといろいろ考えたのですが、こちらにすることにしました。

そう、話題のタイミーです。

ご存知の方も多いと思いますが、タイミーは、「空いた時間に働きたい人と、すぐに人手が欲しい店舗・企業をつなぐスキマバイトアプリ」です。

サービスを運営する株式会社タイミーの小川嶺(おがわ・りょう)社長は、立教大学4年生で現在22歳。2017年8月に会社を設立し、翌年8月にサービスを開始。そこからわずか1年4か月で、利用者数50万人、導入店が7,000箇所を超えるという急成長ぶりを見せています。(数字はいずれも2019年12月18日現在)

というビジネス面の評価はその筋の専門家にお任せするとして、私が今回、タイミーを取り上げたいと思ったのは、久々に「このネーミング、いいわぁ、やられたわぁ」と感じたからです。そのやられた感がなんなのか、どこから湧いてくるのかを、書いてみたいと思います。

ネーミングは、それを見たり聞いた人の記憶に残らなければいけません。ですから、シンプルでわかりやすいことが基本として求められます。ただ、これだけだとどこにでも転がっている名前になりがちなので、そこにユニークさというもうひとつのポイントが加わります。

ユニークさの拠りどころは、事業や理念やカルチャーといったことになります。GAFA各社をはじめ、ユニクロ、楽天、ソフトバンク、メルカリ…、みなそうですね。タイミーの場合も、「一人一人の時間を豊かに」(同社ウェブサイトより)というビジョンを拠りどころにしています。

一方で、「シンプルでわかりやすい」ことと「ユニークさ」を両立させるネーミングは、なかなか難しいという現実があります。なぜなら、これらが重なり合うところはネーミングを考える際に誰しもが狙うポイントであり、それゆえにすでに考案されている確率が高い。わかりやすく言いますと、検索の網に引っ掛かる、つまりネーミングとして二番煎じになるケースが多いからです。

タイミーは、見ての如く、「Time」と「me」という2つの英単語の掛け合わせでできています。しかも、2つともに小学生でも知っているような英単語です。こういった言葉を、私たちは“Big Word”と呼んだりしますが、「えっ、こんな大物同士の組み合わせで、まだ(検索に)引っ掛からないネーミングが残っていたんだ」という驚き。これが、タイミーにやられた感の正体であるように思います。

ネーミング開発というのは、少々大袈裟に言うと、広い砂浜のなかから1粒のきらりと光る宝石を拾うような作業です。この瞬間にも新しいネーミングが生まれ、ネット上に公開され、検索されるいま、宝石はますます見つかりにくくなっているように思います。

でも、タイミーのようなネーミングに出会うと、悔しいと思う反面、宝石はまだまだたくさん眠っているのだという、ちょっとした勇気のようなものが沸いてきます。

行くぜ、言葉の砂浜へ。来年も、どうぞよろしく。

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