日曜日には、ネーミングを掘る ♯062 pineal

今週は!

前々回のブログで、起業されようとしている29歳の青年Tさんから、社名を依頼されたというお話を書きましたが、決まりました。

pineal(ピネアル)

というのがそれです。

ネーミングが下りてきたのは、5月19日。全米プロゴルフ選手権に出場していた松山英樹選手をテレビの前で応援していた午前3時50分くらいだったでしょうか。

以下、Tさんにメッセンジャーでお送りした内容です。

Tさん、

社名として、
ピネアル(pineal)をおすすめします。

由来は、松果体(pineal body)から。

ご存知かもしれませんが、
松果体は脳内に存在する小さな内分泌器で、
2つの大脳半球の間に位置し、
概日リズム(体内時計)を調整する
ホルモンを分泌することで知られています。

脳内の奥深くにある松果体の存在は、
古くから神秘的な存在とされ、
哲学者たちを魅了してきました。

とくにデカルトは松果体を
物質と精神を相互作用させるものと考え
その研究に時間を費やし、
松果体を「魂のありか」としました。

ピネアルをおすすめする理由は
いくつかあります。

・Tさんが仰っていた
目立たない存在ではあるけれど、
重要な役割を果たしたい
という考え方に合致すること。

・logicalとemotional、
scienceとartなど、
これからの企業経営にとって
より必要となるであろう
対照的な要素を結び付ける
存在であることを表現できる。

・特定の事業に縛られない
広がりがあること。
(デジタルマーケティングから
のスタートですが、そこに
縛られたくないと仰っていましたね)

・新会社が今後21世紀の日本を
代表するような企業に成長しても、
それにふさわしいシンプルで
印象的な言葉であることなどです。

ネーミングには、たとえば小林製薬の商品名のように名前を見ただけで意味がわかるストレート系統のもの、最初は「?」(なんなのこのネーミング)と思って掘っていくと「!」(なるほど、そうなんだ)というストーリー系統があるように思いますが、今回のようなケースでは、後者の方が合っているかもしれませんね。

ネーミングにまつわる私が好きな話のひとつに、実在する究極の素粒子といわれるクォーク(quark)に関するエピソードがあります。この名称は、「クォークの父」と呼ばれる物理学者マレー・ゲルマンが、アイルランド人作家・ジェイムズ・ジョイスが著した超難解な小説『フィネガンズ・ウェイク』のなかの一節“Three quarks for Muster Mark”(クォークには3種類あり、しかもそれを理解するのは非常に難解であるという、2つの意味をかけている)から命名しました。量子力学と小説という組み合わせが、とってもチャーミングなのです。

Pinealという会社が、いつかこんなふうに語られるようになったら嬉しいですね。

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