今週は。
新型コロナが猛威を振るうなか、
印象に残った出来事、2つ。
1つめは『ONE PIECE』96巻。
“煮えてなんぼのおでんに候”
ONE PIECEは、
連載が本格化してきた頃から
伏線の物語といわれてきた。
ネーミングの観点からみても
“D”の一族など興味深い伏線が多い。
23年間にわたって、
至るところに張られた
こうした伏線が次々と
解き明かされていく驚きとともに
作者である尾田栄一郎氏が、
11世紀初頭に『源氏物語』を生み出した
この国の豊かな物語文化の系譜に連なる
表現者であることを確信した巻である。
「全伏線、回収開始。」
公式YouTubeチャンネルの
キャッチフレーズも洒落が利いている。
もう1つの出来事は、
数学に関すること。
京都大学数理解析研究所の
望月新一教授が著した「ABC予想」に
関する論文が正式に認められ、
証明されたというニュースである。
1985年に、スイス人とフランス人、
二人の数学者によって提示された
「ABC予想」は
現代数学における超難問として、
世界中の数学者たちを悩ませ、
未解決のままであった。
望月教授が証明のために書いた論文は、
A4のペーパーにして約600頁
(うち解説部分が約100頁を占める)。
2012年8月に発表されてから
7年半後の世界的な偉業である。
新型コロナの騒動がなければ、
ノーベル賞級の扱いになったかもしれない。
この話を読んで、分野は異なるが
アイルランド人作家ジェイムズ・ジョイスの
超難解小説『フィネガンズ・ウェイク』の
日本語訳に取り組んだ
故柳瀬尚紀さんのことを思い出した。
ちなみに望月教授のブログのタイトルは、
新一の「心の一票」
地方出身の冴えない国会議員のような
ネーミングと天才とのギャップに笑う。