日曜日には、ネーミングを掘る ♯150「ショコラが刺さった深紅のパフェ」

今週は!

日本が世界に誇るクリエイター、故石岡瑛子さんの回顧展を観に、木場の東京都現代美術館に足を運んだ。

『血が、汗が、涙がデザインできるか』というタイトル通り、会場内は創造に生きた一人の女性の自我が情熱と絡み合って、強烈なエネルギーに充ち満ちている。作品の1つ1つを解説文を読みながらじっくり鑑賞したら、喉がカラカラに渇いていた。

幸いなことに、この美術館の2階にはカフェがある。その名も『二階のサンドイッチ』である。ビール、ビール、ビールと呟きながら階段を昇ると、目の前に1枚のポスターが貼り出されている。

チクっ。ネーミングが、右脳のとある箇所に刺さって、立ち止まった。

ショコラが刺さった深紅のパフェ、というネーミングの上手さは、展覧会場の熱気に晒され高ぶっている鑑賞者の感情とリンクさせたところにある。

たとえば、この商品、

「ショコラ付きイチゴとフランボワーズのパフェ」

というネーミングであっても良いわけである。商品を的確に表しているし、十分美味しそうでもある。実際、SOUP STOCK TOKYOにはこういう類の名前の付いた商品がたくさんある。しかし、これでは感情までは揺さぶられない。

「ショコラ付き深紅のパフェ」

これでもまだ弱い。

「ショコラが刺さった深紅のパフェ」

ここではじめて右脳が反応をはじめる。「付き」と「刺さった」との間には、天と地ほどの差があるのだ。

もう一歩踏み込んで、

「ショコラが突き刺さった深紅のパフェ」

だったら、ビールを注文するのを止めて、ショコラを注文しただろう。

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