♯159「なにか、の正体」

今週は!

大瀧詠一が遺した全楽曲のサブスクが解禁になり、早速『A LONG VACATION』をダウンロードした妻が、その日、買い物に行く車の中で流した。通常、このような「昔の曲」を聞く際には、懐かしさ以外の感情はあまりわかない。しかし、このアルバムは違った。

君は天然色
Velvet Motel
カナリア諸島にて
我が心のピンボール
雨のウェンズデー
スピーチ・バルーン
恋するカレン
FUN×4
さらばシベリア鉄道

40年前に発売された楽曲が、いまそこで生まればかりのような輝きと新鮮さをもって胸に響く。以来、その理由がわからないまま、憑りつかれたように繰り返し聞き続けていた。

雑誌『PEN』(4/1発売号)の大瀧詠一特集で、作詞を担当した松本隆が、このアルバムについて語った一文がある。

―『ロンバケ』は、なにかの中心を“突いた”んだろうね。僕も、大瀧さんも意図せず、普遍的ななにかを。

そうか。心を揺さぶられたものの正体はこれだったのか。ようやくボクは合点する。

なにか、とは何か。それは、わからない。なにかは、なにかのままでいい。なぜなら、なにかは感じるものだからだ。

なにかを説明しようとするようになって、世の中はつまらなくなった。

心してかからねばと思う。

 

著者の他の記事を見る

感想・著者への質問はこちらから