「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。
第13回 「5年以内に、何かが起こる?」
前回第12回は「右肩上がりはもう古い」
今はまだ、会社から役割を与えられてる人が多いですよね。
そういう人の方が圧倒的に多いですね。
「君はあの地域で営業やっときなさい」とか「あそこで書類の整理やっときなさい」とか言われて。
はい。でもこれからは、自分の居場所とか役割を、自分で見つけないと生きていけない時代ですから。
「これやりたまえ」とか言われてやってきたのって、ここ数十年の話ですよね?
日本史的に見たら、ほんと最近のことですよ。
じゃあ、やろうと思えば、自分で見つけられるようになるんですかね。自分の仕事とか役割とか。
一気には変わらないですけど、ゆるやかには変わっていくと思ってます。もどかしさはいろんなところで感じますけどね。
どういうところに、もどかしさを感じるんですか?
それは、いちばん大事な「防風林」がないこと。
防風林ですか?
はい。守る存在。逆に新しいことをやろうとしたら、周りがぐちゃぐちゃ言って潰しちゃう。
潰しちゃうんですか?
たとえば不登校とかも、そうじゃないですか。
不登校ですか?
家でゲームばっかりしてると「不登校なのに、家でゲームしてはいけません」みたいな。
不登校で、家でゲームって、普通止めませんか?
いやいやいや。不登校でゲームしてるほうが、将来のためになる可能性が高いんですよ、今の時代って。
普通の親は、なかなか理解しがたいでしょうね。
もし自分の子供が不登校でゲームやってたら「道を開くために、われわれ大人が何かできないかな」って考えないといけない。
まあ。普通は「学校行け」ってなりますよね。
はい。「学校行きなさい」とか「家で勉強しなさい」とかってなる。
それではダメだと?
子供の芽を摘むことになりますよね。本当は子供のための防風林になってあげないといけないんですよ。
家でゲームやってることが「将来にどう役に立つのか」が分からないと、無理じゃないですか。
そこで得られてるものって、いっぱいあるじゃないですか。
たとえば?
たとえばネットゲームだったら、ヘッドセット付けてコミュニケーションできるので、世界中の人といろんな会話ができたりとか。
う〜ん。たとえば勉強サボって野球ばっかりしてる子供って、才能があればプロ野球で食べていける可能性もありますよね。
ありますね。
でもゲームは遊んでるようにしか見えない。
今、すごいんですよ、ゲームって。
大会があるらしいですね?
何十億稼ぐ人とか、いますからね。
じゃあ、それすらない分野だったらどうなんですか。たとえば蟻をつかまえてずっと観察してる子供とか。
さかなクンとかそうじゃないですか。魚好きすぎて、お母さんがいろんな市場行って魚買ってきて、気付いたら教授になってたみたいな。
なるほど。さかなクンは、お母さんが偉かったと。
親がそういうふうに子どもを見れた時代って、あったんですよ。
今は稀でしょうね。
受験戦争という時代になって、そういう親がいなくなってきたんじゃないですか。
反論するわけじゃないんですけど。
何でしょう?
泉さんって、ご自身は京大卒じゃないですか?実際それが、ひとつのブランドになってますよね?
最初の頃はなってましたけど、最近はあんまりないですよ。
本当ですか?
はい。
じゃあ中卒だってプロフィール出しても、同じぐらい仕事取れる自信ありますか?
ありますね。実際カタログとかに学歴書かなくなりましたから。学歴のインパクトって、15年前と比べたらだいぶ落ちてきてますよ。
「京大出てるから、そんなこと言えるんだよ」って反論されませんか?
されますね。
でも京大出てても、まったく売れない研修講師っていますもんね。
もちろんいますよ。それだけで売れたら苦労しません。
でも実際、恩恵受けてきたこともあるでしょ?人生の中で。
それはありますよ、やっぱり。そこで信頼されるみたいな。資格みたいなもんですよね。
じゃあ、取れるもんなら「高学歴は取っていたほうがいい」って感じですか?
それは、これからの子どもたちの話ですか?
はい。
いや、自分の子どもだったら、推薦はしませんね。勉強好きだったら推薦しますけど。
勉強が好きじゃなかったら、別に進学する必要はないと?
「中卒でもいいんちゃう」って思いますね。
ホントですか?自分の子供でも?
はい。前にもお話ししましたけど、安田さんの弟子になったほうが、よっぽどブランド力が上がると思います。
でも実際に、大卒初任給いくら、高卒いくらって、新聞に出てますよね。「大学出てるだけで、これだけ収入が違うんだ」みたいな。
それは雇われた時の話ですよ。これまでの常識。
確かに。ZOZOTOWNの社長だって高卒ですもんね。
でしょ。
じゃあ、泉さんの子どもがすごく勉強できて、先生に「この子は東大行けますよ」って言われても、本人が興味なかったら「別にいいよ」って感じですか?
もう全然ですよ。「勉強に興味ないんだったら、やめときやめとき」って言います。
実際そうなったら、どうなるか分かりませんよ。
いや、今も言ってますから。「高校とか大学に行くお金、何か別のことに使ってもいいよ」って。「やりたいこと何かないの?」って。
小さい頃から積極的に「その子の居場所探し」を、親は手伝ってあげたほうがいい?
そう思いますよ。40歳過ぎて探すのは大変ですから。
今、45歳以上の退職勧奨とか、多いじゃないですか。
この5年で、もっと凄くなると思います。加速しますね。
周り見てると、それに応募しようっていう人って、自分に自信がある人なんですよね。
自信がなかったら、しがみつくしかないですからね。
会社としては「まずこいつらに辞めてほしい」っていう人が、意外と残っちゃう。
そうなってますね。辞めて欲しくない人から辞めていく。
会社としたら、できる人が辞めちゃって困らないんですか?
いや、困ってますよ。
でも、リストラは止められない?
そっちのほうが苦しいんですよ。このままの給料で、あと15年とか20年雇うのはしんどいと。
たとえ優秀な人が辞めちゃったとしても?
優秀な人も一緒に去ってしまっても、そっちのほうが優先順位が高い。
優秀な人ひっくるめても、減らしたいと。
減らしたい。それは凄く感じます。
年功序列で給与高くしたから、こんなにしんどくなっちゃったんですか?
そうです。
なぜ、そこを変えないんですか?
変えられないんですよ。もう世の中変わってしまってるのに、本人たちが気付いてないので。
「世の中が本当に変わってしまった」っていうことが、一般の人に分かるようになるのって、何年後ぐらいですか。
加速していると考えると、5年ぐらいでしょうね。
5年!じゃあ、5年ぐらい経ったら「お前の得意なことやればいいよ」っていう時代になるんですかね。
1回ピンチがくるはずなんですよ。明治維新みたいなのが。そういうのが5年以内に来る予感がします。
ピンチっていうのは、大手からの大量の解雇みたいなのですか?
分からないです。経済活動が1回止まっちゃうとか。そういう、とんでもなくインパクトが大きな出来事。
そういうのが無いと、目が覚めないですもんね。
明治維新も黒船によって、みんなが目覚めましたから。
じゃあ、世界規模で何かが起こるんでしょうか?
預言者じゃないので分かりませんけど(笑)。そんな予感はしますね。
…次回へ続く…