変と不変の取説 第83回「国家と国民の悪循環モード」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第83回「国家と国民の悪循環モード」

前回、第82回は「双子(ふたご)と魂(たましい)の関係

安田

最近ちょっと考えちゃうんですが。国の役割って何でしょう。

基本的には国民の生命・財産を守ることです。

安田

国民を守る。その代わりに年貢たる税金を納めろってことですか。

そういうことです。

安田

命を守ることの中に、いまの時代なら電気・水道・住む場所ぐらいまでは入ってきますよね。

それを維持するために社会保障制度があるわけです。

安田

でも社会保険料って半分は会社が払うじゃないですか。

そういうルールですから。

安田

解雇もできないし。コロナで休ませても給料払わなくちゃいけないし。

それが日本の労働法です。

安田

つまり、本来は国が守るべき国民を会社に守らせているということですよ。

そういうことになりますね。

安田

老後に関してもそう。どんどん定年を延長したり。なんで会社が老後の面倒まで見なくちゃいけないんですか。それって国家の役割でしょ。

経営者はよく黙って払ってますよ。

安田

そうですよ。どんどん会社に押し付けちゃって。

労働法ができた当初は目的が合致してたんでしょうね。

安田

どう合致してたんですか?

会社が「社員を守る」というメッセージを出して、エンゲージメントを高めるという目的と合致してた。

安田

会社と社員とのバーターみたいな。

そうそう。その分、愛社精神と責任感をもって一生懸命働いてくれる。

安田

国家の役割を会社に押し付けてるようにしか見えないんですけど。

「半分払ってあげる」ってところでバランスが取れてたんですよ。国家にもメリットがあり、企業にもメリットがあり、社員にもメリットがある。

安田

そんなメリットありますかね。

人を雇って囲い込みができる。国としては安定した雇用で失業率が減る。企業が窓口になって税金もちゃんと払ってもらえる。国の財政も安定する。

安田

国にとってのメリットは分かります。社員の税金を徴収して、社会保険料まで負担してくれて。でも会社にそこまでするメリットがありますか?

今はあんまりないでしょう。すぐみんなポンポン辞めるんで。

安田

そうですよね。なくなってきました。

はい。

安田

転職は自由なのに解雇はできない。しかも定年はどんどん伸びる。

ですね。

安田

国にはもうお金がないから「おまえらが面倒見ろ」ってことですよ。

まあ実際そうなんでしょう。

安田

これって国としての責任放棄じゃないですか。国民にも「国に守られてる」という実感がないと思う。

かなり薄いでしょうね。

安田

国民はもはやそういうのを国に求めてないんですか。

「国家に守られてる」「お国のため」という意識はだいぶ薄らいできてる。

安田

ですよね。

そこを守ってくれる人は尊敬するので、昔は議員さんや総理大臣をリスペクトしてました。最近はリスペクトしてないから「アベノマスク」とか言ったりする。

安田

普通の国民って、どちらかというと政治家を見下している気がします。

「人生をなげうって、公のために命を賭けて、自分たちを守ってくれてる」と分かれば尊敬します。

安田

そんな政治家いますか?

ゼロではないと思います。

安田

ほぼゼロですよ。

国民もそこまで求めてませんからね。

安田

海外なら、国がいざというときに守らなかったら、暴動が起きますよ。

起こりますね。

安田

日本の場合はそこまで国家に期待してないってことですか?

そう思います。

安田

にも関わらず、文句も言わずに税金や社会保険料を払い続ける。

裏では文句言ってますけど。

安田

ネット上で文句は言いますけど。でもみんな素直に払ってるじゃないですか。

飼いならされたんですよ。

安田

飼いならされてるんですか?我々国民は。

はい。

安田

じゃあ国民は「国家から見た“飼い犬”」ってことですか。

非常に有能な飼い犬ですよね。デモや暴動は起こさないし。扱いやすい。

安田

日本国民って扱いやすいんですか。

はい。だってほとんどストも起こらないじゃないですか。

安田

日本の政治家って、海外の政治家から見たら楽ですか?

楽勝でしょうね。

安田

その割に国内ではあんまり人気ないですよ。

楽な仕事は尊敬されませんから。楽にお金がもらえて安定してる職業ってだけ。

安田

でも総理大臣になっても、たかが3000万円ぐらいですよ。自分で会社つくった方がよっぽど稼げると思うんですけど。

収入だけなら経営者の方が上でしょうね。

安田

政治家になる人って何を求めてるんですか。名誉ですか?

自分たちで国の方向性を変えて行くとか。国家の意思決定をするとか。そういうものに関わっていたい人。

安田

ほんとですか。

「変えていきたい」「良くしたい」という思いはベースとして持ってると思います。

安田

この国を良くしたいという気持ちはあると。

気持ちはあるんですけど能力が低いってことです。なぜ能力が低いかというと国民のレベルが低いから。

安田

それはそうですよね。国民の代表ですからね。

目利きがいなかったら良いものは流通しない。100円ショップだけで済んじゃう。

安田

でも、このままだと国民のレベルが下がり、政治家のレベルも下がり、それに合わせて国民のレベルも下がり……って、どんどん下がっていく。

現にそうなってます。政治に関して家族で話す時間って、日本は格段に少ないんです。

安田

少なそう。

家庭でもなければ、学校でもなければ、友達どうしでもない。だから関心もなく何も学ばないまま「選挙権もらいました」となる。

安田

そもそも優秀な人が「政治家になりたい」と思ってないでしょ。

思ってないでしょうね。完全に悪循環モードに入ってる。

安田

悪循環モード?

みんなのレベルが低い。レベルの低い人がリーダーになる。「なにあの人。しょぼ。あんなんになりたくないわ」というモード。ここから抜け出すのはかなりしんどいです。


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


| 第1回目の取説はこちら |
第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

感想・著者への質問はこちらから