第54回「出願データから見る2020年」

このコラムについて
世の中の情報は99%が「現在」または「過去」のものでしょう。たった1%の未来情報をつかめる人だけが、自分のキャリアやビジネスを輝かせるのです。でも、未来情報なんか手に入らないよ!と思ったアナタ。ご安心を。もしアナタが古い体質の会社に勤めているなら超ラッキー。そんな会社の経営者ならビジネスがハネるかも。

未来コンパスが、あなたの知らない未来を指し示します。

 第54回  「出願データから見る2020年」

未知のウイルスであったコロナウイルスに直面した2020年、企業や個人のビジネスマインドはどう変化したのか。特許庁に申請された商標出願の商品・役務のデータを追いかけ、実態を探りました。
出願された商品や役務に付されるコード(類似群コード)をデータベースから抽出し、コロナがまだ世に認識される前の2020年1月を基準値100%として月ごとに増減率を割り出しました。

新しい生活様式の象徴的アイテムとも言えるマスク系の出願数は、2020年2月には大きな変化がないものの、その直後の3月に跳ね上がります。「医療用マスク」に該当する類似群コード17A05を含む出願は、オリンピックの延期が決まった3月には221%、緊急事態宣言が初めて発令された4月には265%となり、その後も高い水準が続きます。我々が身近に使う「衛生マスク」(類似群コード01C01)も150~200%ほどで推移しています。
買占めや転売騒動をきっかけに、日用品企業はもちろん、家電メーカーがマスクを生産し、さらには個人までもがマスクづくりを始めた様子がデータからうかがえます。

同時に「人工呼吸器」や「医療用機械器具」(類似群コード10D01)の出願数も、3月159%、4月169%、5月173%、6月186%と月を追うごとに増えています。志村けんさんの死亡というショッキングなニュースや医療体制ひっ迫への不安が、医療機器の必要性を強く認識させ、結果として出願データに反映されたのでしょう。

レストランや居酒屋が打撃を受けた飲食系の出願データも反応が見られます。「飲食物の提供」(類似群コード42B01)を含む出願は、1回目の緊急事態宣言が出た4月に13%減、宣言が延期された5月に11%減と、飲食系のビジネスマインドも冷えていたことが見て取れます。

■未来コンパスが指すミライ

オリンピック延期の可能性に触れるニュースが出た2020年2月、「変なニュースが出ていたよ」「そんな訳ないですよね」なんて会話が私の周りでなされたことを鮮明に覚えています。ウイルスの脅威に対してまったく現実感がなかった1年半前。振り返ると世の中が様変わりしたことを痛感します。

商標のデータは、そんな様変わりした私たちの生活やそれに関連するビジネスの動向を映し出しています。今回は数ヶ月間のデータでしたが、3年~5年の中長期スパンでデータを追っていけば、これからのミライを紐解くヒントになることでしょう。定期的に追いかけていきます。


(※)料金未納で大量に出願却下されている特定出願人の出願データを除いています。

 

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 この記事を書いた人  

八重田 貴司(やえだ たかし)

外資系企業/法務・知財管掌。弁理士。
会社での業務とは別に、中小・ベンチャー企業への知財サポートをライフワークとする。クライアント企業が気づいていない知的財産を最大化させ、上場時の株価を上げたり、高値で会社売却M&Aをしたりと言った”知財を使って会社を跳ねさせること”を目指す。
仕事としても個人としても新しいビジネスに興味があり、尖ったビジネスモデルを見聞きするのが好き。

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