第101回「DX、導入するか活用するか」

このコラムについて
世の中の情報は99%が「現在」または「過去」のものでしょう。たった1%の未来情報をつかめる人だけが、自分のキャリアやビジネスを輝かせるのです。でも、未来情報なんか手に入らないよ!と思ったアナタ。ご安心を。もしアナタが古い体質の会社に勤めているなら超ラッキー。そんな会社の経営者ならビジネスがハネるかも。

未来コンパスが、あなたの知らない未来を指し示します。

 第101回  「DX、導入するか活用するか」

イスラエルのスタートアップを調べていたら、以前に使用を検討していた秀逸なソフトとその会社が大きく成長していたことを見つけました。
ウェブサイトの操作を迷わないように案内するソフトウエア「Walkme」です。


国際登録第1162015号(権利者:Walkme Ltd.)
【商標】

【指定商品/役務】(抄訳)
ウェブサイトの特徴及び機能の同時ナビゲーション等を提供することによりユーザーを支援するソフトウエア など


世間はデジタルトランスフォーメーション(DX)全盛で、会社が導入するツールはどんどん増えています。DXを掲げてクラウドを導入したものの、定着せずに従来のやり方に戻っている、なんてことは皆さんの周りでも起きているのではないでしょうか。

法務部に所属する私は、導入に成功した事例と失敗した事例の2つを経験しました。
成功したのは、契約書の電子署名システムです。
紙の契約書に押印する代わりに、契約書のデジタルデータに電子署名をすることで、契約を締結するサービスです。製本や郵送の手間を省くだけでなく、海外企業とのタイムラグ解消や印紙代の削減などメリットが多く、2018年の導入以来、現在までフル稼働です。

他方で、使い切れていないのは、業務フローの申請システムです。
例えば、新しい取引先とビジネスを開始する場合、当社では各役職者に承認を得る必要があります。この承認を書類やハンコではなく、デジタル上で完結するのが業務フローシステムなのですが、メールで代用されたり、システムが使用されても使い方に関する同じ問合せを繰り返し受けたりしています。

成功と失敗を分けたのは、ユーザーが感じるストレスの差だろうと思います。
成功した電子署名システムは、いつも法務が担当するため、操作に迷いがなくストレスになりません。他方で業務フローの申請システムは、営業やマーケティングの担当者が、慣れない画面に向き合いながら操作しなければなりません。本業で忙しい中、分かりにくい操作に時間を取られるとシステムが使われなくなるのも理解できます。

こういったデジタルツールの迷子を減らすことを目的としているのがWalkMeです。
WalkMeは、画面上に案内表示をすることで、ユーザーに一目で次の操作を教えます。システムの提供部署にとっても、操作マニュアルの作成や繰返しの問い合わせから解放されるメリットがあります。しかも、案内表示は、仮想レイヤーを作成しているだけなので、既存システムに変更を加えず簡単に導入が可能です。

未来コンパスが指すミライ

どんなにメリットがあっても、新しいソフトを導入すると、従来のやり方を変更せざるを得ないため、「定着」フェーズに移行するまでに、超えるべき“習慣の壁”が存在します。
WalkMeは、従来のソフトウエアが重きを置いてきた「機能」という視点から「定着」という視点に切り替えたことで、全く新しい需要を開拓しました。新たなソフトウエアを導入する会社はすべてWalkMeの潜在顧客になり得るのです。
これは私に、ゴールドラッシュで一番儲けたリーバイスの話を想起させます。
需要が多いのは、一見ウマミがありそうな領域(DXや金鉱山)ではなく、それに従事するユーザーの課題を解消する領域(ジーンズやWalkme)かもしれません。新しいサービスが順次生まれる未来はそれがより顕著なように思います。

 

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 この記事を書いた人  

八重田 貴司(やえだ たかし)

外資系企業/法務・知財管掌。弁理士。
会社での業務とは別に、中小・ベンチャー企業への知財サポートをライフワークとする。クライアント企業が気づいていない知的財産を最大化させ、上場時の株価を上げたり、高値で会社売却M&Aをしたりと言った”知財を使って会社を跳ねさせること”を目指す。
仕事としても個人としても新しいビジネスに興味があり、尖ったビジネスモデルを見聞きするのが好き。

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