「遊んでいるかのように働きたい」をモットーに、毎日アロハシャツ姿で働く“アロハ美容師”こと岩上巧さん。自身が経営するヘアサロン「mahaloco(マハロコ)」には、岩上さんしか実現できない<ココロオドル髪型>を求め多くのお客様が訪れます。その卓越したビジネスセンスの秘密に、ブランディングの専門家・安田佳生が迫る対談企画です。
第2回 勘違い(?)で「月200万円の売上」を達成
引き続き「マハロコ」をオープンされる以前の岩上さんについてお伺いしたいと思います。前回は、社会人1年目で入った小岩の美容室で、半年でスタイリストデビューしたという話を聞きました。そちらのお店では何年勤務されたんですか?
2年弱ですかね。というのは、入社時点で「3年以内に店長になって辞める」と決めていたんですよ。
ほう……これまた先輩からは「生意気な新人だ」と怒られそうな目標だ(笑)。
今思えばそうですねぇ(笑)。ともあれ、本気でそうしたいと思っていたので。
ちなみに美容室の店長って、どうやったらなれるんですか?
僕もわからなかったので、専門学校時代の先生にアドバイスを求めたりして。そうしたら、「月の売上が200万円もあれば、きっと店長になれるだろう」って言われて。
ははぁ、なるほど。例の恩師の先生からはどんなアドバイスがありました? あのテレビ局のプロデューサーだった方。
恩師からは「とにかく俺が教えた接客だけで売上を達成しろ!」って檄を飛ばされましたね(笑)。
なるほど(笑)。それで結局達成できたんですか?
ええ、がむしゃらに頑張って、3年弱で月200万円を達成しましたね。
すごい! じゃあ店長にもなれたわけですね。
いやそれが……そもそもの話、その店には先輩が大勢いたので、彼らを僕が飛び越えて店長になれる状況でもなかったんですよね。
えっ、じゃあもしかして、月200万円は「頑張り損」だったと?
「店長になるため」という意味では、確かにそうですね(笑)。ただね、僕はあんまりわかっていなかったんですが、実は月200万円って店長どころか独立したって十分な額だったんですよ。
そうなんですか? もう自分でお店を持てるレベルだと。
そうそう。あらためて調べてみたら月60~70万円で独立してる人がたくさんいて(笑)。先生たちの「月200万円必要だ!」っていう言葉を、考えなしに信じちゃってたんですよね。
なるほど(笑)。素直な若者ですね。
笑。ともあれ、頑張れば200万円売り上げられることはわかったので。それはすごくいい体験だったなと思ってます。
確かにそうか。最初から「60万円でいい」と思っていたら、そこまで頑張れなかったでしょうしね。それにしても、月200万円稼いだ美容師さんって、月給はいくらくらいになるんです?
いや、普通に月18万でしたね(笑)。歩合制じゃなかったので。
えぇ!? 月に200万円も稼いでいるのに、それしかもらえないんですか(笑)。
まぁ制度的にそうでしたから。ともあれ、そんなときに別のお店から「店長としてウチで働かないか」とお声がけをいただいたので、小岩のお店は辞めることにしまして。
なるほど、その店ではなかったけれど、結果的に「3年以内に店長になる」という目標は達成できたと。とはいえ、それだけ売上を伸ばしている美容師なんですから、さすがに引き止められたんじゃないですか?
うーん、まぁ、普通ならどちらかというと「辞めるなんてどういうことだ」と怒られるパターンなんでしょうけど。でも例の恩師の紹介だったこともあって、ワガママが許された感じですね。次の吉祥寺の美容室も恩師のコンサル先で、すんなり入れましたし。
なるほど。恩師がずっとサポートしてくれてたんですね。
はい。ちょっと端折っていましたが、学校を卒業してから3年間、休日は恩師の鞄持ちとしてコンサルのお手伝いもしてたんですよ。そういうこともあって、本当に可愛がって貰いました。
ははぁ、なるほど。ちなみに新しく働き始めた店には、小岩の店のお客さんもついて来てくれたんですか?
ああ、いえいえ。当時はSNSもないし、顧客データは紙のカルテで管理してましたから、今ほどゴッソリ移動してくる感じじゃないですね。ごく親しいお客さんだけに、こっそり次の勤務先を教えたくらいです。
つまり吉祥寺の店は、言わば指名ゼロの状態から始まったわけですね。でも念願の店長として働けるわけですから、やりがいはあったでしょう?
まぁそうなんですけど……実をいうとその店舗、ちょっといわく付きだったんです。というのもそこ、オープンしてまだ2年目だったのに、僕が5人目の店長で(笑)。
え? 2年で5人って、つまり次々店長が変わっているってことですよね。なんでそんなことに……
まぁ、なかなかこだわりの強いオーナーで、店長と喧嘩してクビにしちゃうんですよ。……ちなみに先にネタバラシをしてしまうと、この後僕自身もクビにされることになります(笑)。
なんと! もうそのエピソードから聞いてしまいたいところですが、すぐにクビになったわけじゃないですよね。どんな働き方をしていたんですか?
僕と短大を卒業したばかりの女の子2人のお店だったんですけど、店長になった当初は本当に暇で(笑)。先ほども言ったように前のお店では月200万円売り上げていたのに、こっちに来て初月は2人で月70万円くらいしかなかったんです。
へぇ、人数は倍なのに売上は半分以下ですね。
そうなんです。こりゃマズイなと思って、既存のお客さんに対するヒアリングを本格的に始めていった。
ふむふむ。それで何か分かったんですか?
ええ。当時その店って「ベル・ジュバンス」というパーマ液が主力商品で、お客さんもそれを目当てに来ていると思っていたんです。でも話を聞くと、もっと別のスタイルに挑戦したいという人も大勢いた。
ははぁ、恩師直伝の「接客」で、潜在ニーズを掘り起こしたわけだ。
そうですそうです。それで自分たちから新しいメニューの提案をしたりして、単価もリピート率も伸ばしていきました。
ははぁ、なるほど。今のところなぜこの人がクビになるのかわかりませんが(笑)。次回続きをお聞かせ下さい。
対談している二人
岩上 巧(いわかみ たくみ)
アロハ美容師/頭髪改善特許技術発明者/パーソナルブランディングプロデューサー/株式会社 OHANA 代表
美容専門学校卒業後、都内のサロンに就職するも、オーナーと価値観の違いから大喧嘩し即クビに。出身地である水戸に戻り実家の美容室で勤務しながら技術を磨き、2008年自身のヘアサロン「mahaloco(マハロコ) 」をオープン。結婚式のプロデュースやイベント企画なども行うパーソナルブランディングプロデュースサロンとして人気を博す。2014 年、髪質改善技術「美髪矯正 hauoli®(2021 年特許取得)」を開発。「まるでハワイで暮らしているように」をテーマに、毎日アロハシャツを着、家族・仲間・お客様と共にハワイアンライフを満喫中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。