その104 プロモーションを含みます

先日、腕時計趣味をテーマにした動画をながめていたら、
ある個人の人気投稿者がいくつかの動画内のコメントで
炎上とまでいかずとも、ぼこぼこに叩かれていました。

「もう案件ばかりですね。以前は良かったのに…」
「案件紹介になり下がってしまって残念です。もう見ません。さよなら」
といった具合です。
ようは、特定の販売者さんやメーカーから依頼を受けて作った、
「プロモーションを含みます」という文言とともに
始まる動画が増えて、その人の場合、えらい顰蹙を買ってしまったわけです。

しかし、人気があるものが商売になるのは世の習い、
最近は個人のSNSが「ファンを持っている」ことで
宣伝媒体としてうってつけのものと見なされていますし、
ファンの側もある程度それには順応しているといえるでしょう。

当然、無料で見ている立場にもかかわらず
「ラクに金を稼ぎやがって…」と思うところもあるようですが、
それよりは「好きな人の扱うことだからある程度付き合おう」という
受け止め方が多数派のようです。
まあ、そうでなければマーケティングにならないわけですが。

ではなぜ、その投稿者の場合は
「この金の亡者め」となってしまったのでしょうか。

世の一般的な「プロモーションを含む動画」では、
推そうとした商品が最初に画面に現れるという始まり方はしません。
本編というか、その回のコンテンツが進むにつれて
どこかの場面でプロモーション対象が紹介される、という流れになります。

それに対して、冒頭の動画チャンネルでは案件か否かを問わず
腕時計がストレートに紹介されており、
ストーリーに沿って段階を踏むということができず、
直球の宣伝になってしまった感があります。

またもうひとつ、こちらの方が大きいように思いますが、
動画にプロモーションを持ちこんだときは、
そのチャンネルの世界観に影響しないことが必須なのではないかということです。

腕時計は正直、それ自体はほとんど生活の役に立たず、
美観や価格、プレミアム性などを
投稿者が良いの悪いのといじりまわすことがコンテンツになるのですが、
だからこそその人の価値観がそのまま動画チャンネルの世界観を作ります。
動画チャンネルにファンが付くというのも、
投稿者の価値観にファンが付いているのとほぼ同義なのです。

反感を買ってしまった投稿者は
そこに好き嫌いではなくビジネスを持ちこんでしまったので、
「こいつの価値観はもう信用できない」
「このチャンネルの世界観は毀損してしまった」
と一部のファンに判断されてしまったのではないか、と思います。

たとえるなら、好きなドラマを見ていて
劇中で唐突に商品のCMがあったとしても少しなら付き合えますが、
最初から商品を販促するために企画されたドラマだったら
まあ、あんまり見る気にはなれないですよね……。

 

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著者自己紹介

「ぐぐっても名前が出てこない人」、略してGGです。フツーのサラリーマン。キャリアもフツー。

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