「遊んでいるかのように働きたい」をモットーに、毎日アロハシャツ姿で働く“アロハ美容師”こと岩上巧さん。自身が経営するヘアサロン「mahaloco(マハロコ)」には、岩上さんしか実現できない<ココロオドル髪型>を求め多くのお客様が訪れます。その卓越したビジネスセンスの秘密に、ブランディングの専門家・安田佳生が迫る対談企画です。
第63回 若くして独立する美容師が増える理由

私は東京の中央区に住んでいるんですが、住宅街なのに美容室がやたらと多いし、最近さらに増えている気もするんです。それで前回の対談とは矛盾するようですが、ひょっとすると実は美容師になりたい人って増えているんじゃないかと思って。

それは恐らく「独立のハードル」が低くなったからでしょうね。それこそ昔は10年くらい下積みしてようやく独立するかどうかという感じだったのに、今は月に5〜60万円稼げるようになればすぐ独立してしまうので。

もちろんシェアサロンなどで働く美容師もいますが、お店を出す人もわりと多いですね。以前も言いましたけど、今は1000万円ほどで出店できるし、意外と銀行もすぐに融資してくれるんですよ。しかも借入金を返済しながら手元に残る金額が、それまでに給料でもらっていた金額と大差なかったりする。

なるほどなるほど。ちなみに私の5歳の息子は、優しい感じのお姉さん美容師じゃないと、じっと座って髪を切らせてくれないんです(笑)。ところがせっかくそういう美容師さんを見つけても、しばらくすると「別の店舗に異動になりました」って言われちゃって。それって本当に異動しているのか、それとも単に辞めるための口実なのか、どちらだと思います?

おそらく、本当に異動しているんじゃないかと思います。そういうことって意外と多いんですよ。というのもお子さんが入りやすいサロンって、もともと料金設定を低めにしていたり、親子で通えるような雰囲気を大事にしていたりするでしょう?

サロン側としてももう少し顧客単価を上げたいと考えた時に、今度は20代後半から30代くらいのアッパー層をターゲットにしたサロンを作ることがあるんです。で、そうなると技術の高い美容師が必要になるので、ベテランがどんどん異動していく。

うーん…やっぱり主流は1店舗経営だと思いますよ。しかも新人を雇って教育するのは苦手な人がほとんどなので、結局は個人か家族で切り盛りしている。たぶん全国の美容師の8〜9割は、個人サロンか家族経営なんじゃないかな。

なるほどなぁ。前回の対談では「教育サロン」と呼ばれるサロンがどんどん減っているというお話でしたけど、「じゃあいったい誰が最初の教育をするのか」という疑問が出てきますけれど。

昔だったら仕事終わりに先輩が無料で教えてくれたけれど、今は自らお金を払って勉強するようになったんですね。…まぁ今の御時世だったら、せっかく営業時間後に無償で教えたとしても「なんで残業代が出ないんですか?」って言われてしまうでしょうからね(笑)。
対談している二人
岩上 巧(いわかみ たくみ)
アロハ美容師/頭髪改善特許技術発明者/パーソナルブランディングプロデューサー/株式会社 OHANA 代表
美容専門学校卒業後、都内のサロンに就職するも、オーナーと価値観の違いから大喧嘩し即クビに。出身地である水戸に戻り実家の美容室で勤務しながら技術を磨き、2008年自身のヘアサロン「mahaloco(マハロコ) 」をオープン。結婚式のプロデュースやイベント企画なども行うパーソナルブランディングプロデュースサロンとして人気を博す。2014 年、髪質改善技術「美髪矯正 hauoli®(2021 年特許取得)」を開発。「まるでハワイで暮らしているように」をテーマに、毎日アロハシャツを着、家族・仲間・お客様と共にハワイアンライフを満喫中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。