第87回 「休めない美容師」から脱却するためのマインド

この対談について

「遊んでいるかのように働きたい」をモットーに、毎日アロハシャツ姿で働く“アロハ美容師”こと岩上巧さん。自身が経営するヘアサロン「mahaloco(マハロコ)」には、岩上さんしか実現できない<ココロオドル髪型>を求め多くのお客様が訪れます。その卓越したビジネスセンスの秘密に、ブランディングの専門家・安田佳生が迫る対談企画です。

第87回 「休めない美容師」から脱却するためのマインド

安田

前回の対談で、私の行きつけの美容院がホットペッパーでの集客を始めた、という話をしましたね。でも「新規客は◯%オフ」と広く新規顧客を集めるより、それこそ前回出ていた特化型店舗、「髪質・頭皮改善専門」みたいな方に行った方がいい気もして。


岩上

詳しい状況がわからないのでなんとも言えませんが、選択としてはアリですよね。前回「ホットペッパーで一番検索されているのが髪質改善というワードだ」という話もしましたけど、ニーズがあるのは間違いないわけで。しかもそういった髪質改善を求めている人ってだいたい40代50代なので、同じ年代のベテラン美容師が活躍しやすい。

安田

ああ〜、なるほど。白髪とか髪のヘタリ・うねりに悩みが出てくる年代ですもんね。同じ年代、あるいはもっと歳上の美容師さんに相談できるのは安心かも。


岩上

そうそう。だから安田さんの行きつけの美容室さんも、カットやカラーで集客するんではなくて、「頭皮の悩みに答える相談窓口になりますよ」という切り口でやるのがいいかもしれませんね。ホットペッパー自体もそっちに振り切って活用する。

安田

うん、いいですね。それなら近所の美容室とも競合することもないでしょうし。


岩上

そうそう。それにね、髪質改善に特化すると言っても、最終的にはカットもするわけですよ。そういう意味で単価が下がるわけでもないし、リピート率も上がるんじゃないですかね。

安田

なるほど! いやもう、次回行った時に美容師さんに提案しようかな(笑)。ちなみにその美容師さんですが、今まで一度も休んだことがないって言うんですよ。店休日以外はずーっと働きっぱなしなんですって。


岩上

へぇ、体調不良なんかでも休んだことがないってことですか?

安田

そうそう。その理由が「お客さんはその日切りたいから予約を入れてくれているんだ。だから休んでしまうと、お客さんが他の店に行っちゃう。だから休めない」と。


岩上

へ〜。僕だったら、普通に休んじゃうけどな(笑)。

安田

ですよね(笑)。岩上さんは「僕がいる時に来てください」っていうスタンスですもんね。


岩上

そうですそうです(笑)。僕がいないことで他店に行ってしまうんだったら、それまでの縁なんだろうなぁと思っちゃう。だから自分が体調不良の時ももちろんだし、家族の体調不良の時とか子どもの学校行事がある時とか、全然普通に休みます。

安田

さすがです(笑)。お店のスタッフさんはどうです? 岩上さんほど強気に出られないスタッフさんもいるんじゃないですか?


岩上

いや、ウチはとにかくスタッフとお客様との関係をフラットにしているんです。だからスタッフが急に出られなくなったとしても、ちゃんとお客様に事情を説明して日にちを変えてもらったり、どうしてもその日でお願いしたいということであれば僕が代わりに対応したりしています。

安田

は〜、素晴らしいですね。ちなみに岩上さんのサロンでも、お客さんが他のお店に流れていってしまうことってあるんですか?


岩上

もちろんありますよ。奥さんから「美容代を削って」とお願いされて、泣く泣く別のお店に行った方とか。

安田

う〜む、不景気になるとまず美容代から削る…ありがちなパターンですね(笑)。


岩上

ええ(笑)。で、今僕はカット7700円でやっているので、もっと安いところに切りに行ったそうなんです。そしたら帰宅後、奥さんから「何、その髪型!」って大笑いされたらしくて(笑)。

安田

奥さんが別の店に行けって言ったのに! それはひどい(笑)。


岩上

まあそんなわけでその方の奥さんも「タクミさんにカットしてもらう金額は削減しちゃダメね」って言ってくれたそうで、また戻ってきてくれました(笑)。

安田

価値をわかってくれて良かった(笑)。とはいえですよ、私の美容師さんの言うことも一理あると思うんです。休んじゃったらその分お客さんがいなくなるリスクはある。岩上さんはそういうの全然心配にならないってことですか?


岩上

うーん、心配にならないというよりも、「どうやったらそれでも来ていただけるのか」に挑んでいる感じですかね。

安田

ああ、なるほど。素晴らしいですね。私の美容師さんも、もっと自信を持てばいいのに。私は「予約を断られても日にちを変えてまた来ますよ」って言ったんですけど、「そういう風に言ってくれるお客さん、少ないんだよ」って。


岩上

ベテランさんほどそう思うんじゃないですかね。今の若い子たちは全然違いますもん。たとえオーナーでも、みんな定時で帰るし、長期休みもしっかり取ってますから。

安田

へぇ。どうしてそんなことができるんです?


岩上

一つあるのは、SNSですよね。ネット上でお客さんと繋がっているから、別にお店にいなくても情報発信や連絡のやり取りができちゃうじゃないですか。

安田

ああ〜、確かにそうか。店にいる時間だけがコミュニケーションの時間じゃないと。


岩上

そういうことです。メールやニュースレターを配信したり、ブログやInstagramに登録してもらったり、遠隔でいくらでもやれる。予約もネットで取ってもらうのが当たり前になりましたしね。

安田

なるほどなぁ。そういう時代の変化もあって「休めない」という呪縛から解放されたと。逆に言えば、SNSをどれだけ活用できるかというのが、これからの美容師さんには求められるってことですね。


対談している二人

岩上 巧(いわかみ たくみ)
アロハ美容師/頭髪改善特許技術発明者/パーソナルブランディングプロデューサー/株式会社 OHANA 代表

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美容専門学校卒業後、都内のサロンに就職するも、オーナーと価値観の違いから大喧嘩し即クビに。出身地である水戸に戻り実家の美容室で勤務しながら技術を磨き、2008年自身のヘアサロン「mahaloco(マハロコ) 」をオープン。結婚式のプロデュースやイベント企画なども行うパーソナルブランディングプロデュースサロンとして人気を博す。2014 年、髪質改善技術「美髪矯正 hauoli®(2021 年特許取得)」を開発。「まるでハワイで暮らしているように」をテーマに、毎日アロハシャツを着、家族・仲間・お客様と共にハワイアンライフを満喫中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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