第171回 電子帳簿保存法って何をすればよいの?
お医者さん
電子帳簿保存が2024年1月スタートって……もうほとんど時間がないじゃないか。そもそもどういう内容なのかよくわからないし……
お医者さん
まぁ、各書類をデータで取っておけってことなんだろうな。あまり深く考える必要はないか。
確かにそうなんですが、意外と厄介かもしれませんよ。
絹川
お医者さん
え? そうなの? ……って、あなたは一体?
はじめまして。ドクターアバターの絹川です。お医者さんの様々な相談に乗りながら「アバター(分身)」としてお手伝いをしている者です。
絹川
お医者さん
ふ〜ん、今はそういう働き方もあるんだね。ともあれ、電子帳簿保存の件だよ。意外に厄介って、具体的にどんな感じなの? 詳しいならザッと教えてくれよ。
わかりました。では概要だけお伝えしますね。まず、決算書や帳簿の電子化は任意なので紙のままでOKです。
絹川
お医者さん
ふむ、なるほど。今まで通りの運用でいいわけだね。
ええ。次に紙で受領した請求書や領収書。これも電子化は任意なので紙のままでOKです。
絹川
お医者さん
あっ、そうなの? なんだ、じゃあ別に大したことないじゃない。要は、ネットでのやり取りだけデータで持っておけばいいってことでしょ?
仰るとおり、電子で受領した請求書、領収書はについては電子保存が義務化されます。メールで受け取ったPDFの請求書とか、amazon等のネットショッピングの領収書などですね。
絹川
お医者さん
じゃあ別に問題ないじゃない。そもそもネットでのやり取りは最初からデータとして残ってるわけだから。
そうとも言えません。というのは、電子保存の要件として「検索機能」「改ざん防止」「見読可能」の3つが必要とされているからです。
絹川
お医者さん
電子保存の要件? なにそれ?
順番に説明しますね。まず1つ目の「検索機能」ですが、「税務調査等の際にすぐに検索して印刷できる仕組みを導入する」ということです。ちなみにこれについては、売上5000万以下の法人の場合は不要です。
絹川
お医者さん
うわ、そうなんだ。何らかのシステムを導入する必要があるってことだね。
ええ。そして2つ目の「改ざん防止」は、以下のいずれかの対応が必要になります。即ち、「A.修正履歴の残るシステムを導入」「B.認証局と契約してタイムスタンプを付与」「C.事務処理規定を作成」です。この中ではCが一番現実的でしょう。
絹川
お医者さん
うわ、面倒くさくなってきた。つまり自分たちで事務処理規程を作成する必要はあると。
そうですね。そして3つ目の「見読可能」は、パソコン等で表示でき、一定の画質以上を確保するということです。まあこれは、相当古いPCを使っていたりしない限りは大丈夫でしょう。
絹川
お医者さん
うーん、なるほど。思っていたほど厄介ではなさそうだけど、でも時間やコストはそれなりにかかりそうだよね。診察で毎日忙しい中で対応できるかな……。
年明けからの運用に間に合わすには、かなり急がないとですよね。ともあれ、“相当な理由がある場合”は「検索機能の免除」がされる、などの措置は取られています。検索可能なシステムを購入するお金がないとか、システムを扱える人材が雇えないとか、そういう理由でも認められるようです。
絹川
お医者さん
なるほどね。ともあれ、何らかの形では対応する必要があるわけだ。絹川さんとしては、ウチくらいのクリニックはどう対応するべきだと思う?
そうですね。まずはネットでサンプルを落としてきて、それをベースに事務処理規程を作成する。次に請求書や領収書は各ファイル名に「日付・取引先」を入れた状態で保存するようにする。保存先はクラウドのストレージの方がいいでしょう。ローカル保存だとそのPCが壊れたら見れなくなってしまうので。
絹川
お医者さん
なるほど。経費の方はどうなの? ネットショッピングの領収書とか。
基本的には買い物をするたびにきちんとデータでダウンロードしておくことをオススメします。amazonなんかだと、領収書のダウンロード期限があったりもするので。
絹川
お医者さん
ははぁ、なるほどね。最初の対応準備よりも、日々の運用の方にパワーがかかりそうだな。
まぁ、すぐに慣れるとは思いますけどね。ともあれ、何かあったときに焦らず対応できるようにしておくことは重要です。それが先生やクリニックを守ることになるので。
絹川
お医者さん
確かにそうだね。自分たちのためにもしっかりオペレーションを考えるべきだね。うん、ありがとう。また相談させてもらってもいい?
もちろんです! ぜひお声がけください!
絹川
医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。
著者:ドクターアバター 絹川 裕康
株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。