第98回 「災害時にカルテが見れなくなる問題」
お医者さん
最近また地震が増えてきた気がする。うちの病院は築年数も古いし、大きな災害が起こったらひとたまりもないだろうな。
お医者さん
待てよ……もし建物が崩れたりしたら、電子カルテの中に入っているデータはどうなるんだ? サーバーは院内にあるんだし、確認できないじゃないか。
まさにそういった理由でクラウドが流行ったんですよね。
絹川
お医者さん
あ、あなたは確か……
こんにちは、ドクターアバターの絹川と申します。お医者さんの様々な相談に乗りながら、「アバター(分身)」としてお手伝いをしている者です。
絹川
お医者さん
ああそうそう、ドクターアバターだ。いいところに来てくれた。電カルの災害対策について教えてよ。さっきクラウドって言ってたけど?
ええ、クラウド型の電子カルテです。先生が先ほど仰っていたように、東日本大震災で電子カルテのデータが見れなくなったお医者さんがたくさんいたんです。
絹川
お医者さん
やっぱり。
それもあってインターネット上にデータを置いておくというクラウド型の電子カルテが流行ったんですよね。これならネットに繋がりさえすればどこからでも見れますから。
絹川
お医者さん
なるほど。いざというときのことを考えると、確かにその方が安心だな。……でも、私が古いんだろうか、インターネットに個人情報を置くってのがどうもね。
わかります。まして患者さんのカルテなんて、個人情報の中でも特に気をつけて扱わないといけないものですし。
絹川
それに、東日本大震災の時はインターネット自体も非常に不安定になりましたよね。クラウド型の場合、仮に建物やパソコンが無事でも、ネットが使えなければ閲覧はできません。
絹川
お医者さん
ああ、確かにそうなるか!うーん、じゃあ一体どんな対策を取ればいいんだ?
ネットが完全に、しかも長時間遮断されてしまうというケースはあまりないとは思うので、クラウド型を検討されてみてもいいと思います。ただ、情報漏えいの可能性もゼロではありませんし、ランサムウェアなどの被害も増えていますからね。
絹川
そういったことからやはりローカルで管理したいということであれば、データ同期用のノートパソコンを一台導入するのがいいかもしれません。
絹川
お医者さん
ノートパソコン?
そうです。診療終了後などに毎日そのノートパソコンにデータを同期し、先生なりスタッフさんがそれを持ち帰る。これがあれば、病院内のパソコンが使えない、あるいはインターネットが遮断されたような状況でも、データにアクセスできます。
絹川
お医者さん
なるほど。ローカルデータの保管場所を増やすわけか。
仰る通りです。多少の手間にはなりますが、それほどコストをかけずに実現できる災害対策だと思います。もちろん管理はしっかりする必要はありますけれど。
絹川
お医者さん
そりゃそうだ。せっかくローカルで保管してるのに、そこから情報が漏れたりしたら目も当てられんものな。
そういうことです。いずれにせよ、災害時に自分たちがどのような動きをするのか、事前に考えておくことが重要ですね。
絹川
お医者さん
確かにね。ちなみに、そういう災害マニュアル的なものの作成についても相談できたりするの?
そうですね。具体的な避難経路などというよりは、災害時の動きに合わせた院内システム、およびオペレーションの企画を提案することはもちろんできますよ!
絹川
お医者さん
いいね。じゃあ近々お願いするよ!
お待ちしています!
絹川
医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。
著者:ドクターアバター 絹川 裕康
株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。