第88回 「罪悪感」を持って「命」を食べ続ける覚悟

この対談について

健康人生塾の塾長にしてホリスティックニュートリション(総括的栄養学)研究家の久保さんと、「健康とは何か」を深堀りしていく対談企画。「健康と不健康は何が違うのか」「人間は不健康では幸せになれないのか」など、様々な角度から「健康」を考えます。

第88回 「罪悪感」を持って「命」を食べ続ける覚悟

安田
日本には昔からクジラやイルカを食べる文化がありました。でも世界的に見ると「あんなに賢い動物を食べるなんて、なんて野蛮なんだ」という風潮になっているじゃないですか。

久保
そうですね。実際、日本の捕鯨漁を非難したり妨害したりする海外の活動団体も多いですから。このグローバル時代に、世界中から嫌われてでもクジラを食べ続けていくのは、なかなか難しいことなのかもしれません。
安田
そういう意味では人間の「罪悪感」ってどんどん拡大していっていると思うんです。昔はクジラを食べても「可哀想だ」なんて言う人はいなかったわけで。いずれ牛や豚などの家畜ですら「可哀想だから食べられない」という日が来るんじゃないですかね。

久保
ははぁ…「クジラと牛、何が違うの?」ということですね。
安田
そうですそうです。最近はベジタリアンビーガンの人も増えていますし、「動物を殺して食べるなんて可哀想だ」という考え方が浸透してきていますよね。これが進んでいけば、やがては誰も動物の肉を食べなくなる日が来るんじゃないかなと。久保さんはどう思われますか?

久保
うーん、どうなんでしょうね。そもそもどこまでを「命」と考えるかって文化や宗教によっても違うんですよね。例えばキリスト教やユダヤ教、イスラム教といった「一神教」では、家畜は神様が人間のために作ったものだから食べていい、と言われているんですよね。
安田
ほう。つまり家畜は「同じ命ではない」という考え方ができるわけですね。ちなみに仏教だと「殺生」自体がダメとされているじゃないですか。

久保
ええ、殺生はダメです。すべての生き物の命は同じであるというのが仏教の考えなので。ただ一方で「殺生をしないと生きていけない」とも言っているんです。要は、人間は生きている限り、罪を犯し続けながら生きている、食べないと生きていけないんだから、罪深い存在であることを自覚しなさいと。
安田
なるほどなるほど。そう考えると今はその罪悪感を必死で隠蔽してますよね。最近の子どもってスーパーに並んでいるパック詰めの魚や肉しか見たことないから、魚はサクで泳いでいて、肉もミンチ肉として育っていると思っているらしいですよ。

久保
ああ、よく聞きますね。確かにその方が「食べるために動物を殺している」という罪悪感を抱かずにすみそうです。
安田
そうそう。ただ、その弊害もあると思うんですよ。命だと思えないから、「ありがたく頂く」という発想にならない。平気で残したり捨てたりしちゃうのもそのあたりに原因があるんじゃないのかなと。

久保
そうですね。命の大切さを感じながら食べれば、そうそう食べ物を粗末に捨てることはできませんもんね。
安田
とはいえ、食べ残したものだって、最終的にはバクテリアが分解してくれる。つまり地球上のなんらかの生き物が食べてくれるので無駄にはならないんだ、なんて主張もできそうですけれど。

久保
もちろん物理的には無駄にはならないかもしれないですが、「命」は無駄になっているんじゃないかなと私は感じてしまいますね。
安田
なるほどなぁ。じゃあ久保さんのお考えとしては、他の動物の命をいただいているんだという「罪悪感」を持って食べ続けるべきだと?

久保
ええ、私はそう思いますね。どんな綺麗事を言っても人間は、動物にしろ植物にしろ何かしらの「命」をいただいて生きざるを得ない存在です。それは自覚しなくてはいけないのかなと。…ただね、それよりも私が言いたいのは、我々人間は「食べなくてもいい命」をあまりにも無駄にしているんじゃないか、ということなんですよ。
安田
ほう。と言いますと?

久保
ビーガンの人たちが、「家畜に与える穀物を作るために、多くの森林を伐採して環境破壊をしている」とよく言うわけです。そうやって多くの植物や動物の命を無駄に奪うのはどうなんだ、と。それだけじゃなく、家畜用の穀物を飢えた人に振り分けたら、世界から飢餓はなくなるんだとも。
安田
ああ、なるほど。確かに、地球上で一番多い植物はトウモロコシですけど、そのほとんどが家畜の餌として使われていますもんね。そう考えると確かにすごく無駄なことをしているのかもしれない。

久保
そうなんですよ。一部の裕福な国の人たちのために、環境破壊をして動物の命も奪っていると考えると、それって本当に必要なことなのかと疑問に思います。そういう意味でも、家畜を食べるかどうかというより「どういう気持ちで食べ物をいただくか」ということの方がずっと重要だと思いますね。
安田
なるほどなぁ。それが「罪悪感を持って食べ続けるべきだ」ということなわけですね。いやぁ、今回もとても興味深いお話をありがとうございました。

 


対談している二人

久保 光弘(くぼ みつひろ)
健康人生塾 塾長/ホリスティックニュートリション研究家

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仙台出身、神奈川大学卒。すかいらーくグループ藍屋入社後、ファンケルへ。約20年サプリメントの営業として勤務後、2013年独立し「健康人生塾」立ち上げ。食をテーマにした「健康人生アドバイザー」としての活動を開始。JHNA認定講師・JHNA認定ストレスニュートリショニスト。ら・べるびい予防医学研究所・ミネラル検査パートナー。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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