“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。
第118回 ディズニー高価格戦略は「正しい選択」か?

前回はジャングリアの話をしましたが、今日は、東京ディズニーランドの経営戦略についてお聞きしたいなと。コロナ禍以降、入場者数は横ばいなのに、業績は過去最高を更新し続けているんですよね。

そうそう。コロナ禍で入場制限をした際、ゲストから「快適で素晴らしい」と非常に好評だったことを受けて、意図的に入場者数を抑制する方向に舵を切ったようです。その分チケット価格を大幅に値上げしたので、客単価が上がり、結果として売上も利益も伸びている。

ええ。ただ一方で、価格が高騰したことで若い世代やファミリー層が気軽に行けなくなってしまったんですよね。来場者の中心は40代以上になり、「もはや夢の国ではない」「ディズニーは終わった」という批判的な声も少なくない。倉橋さんは、このディズニーの戦略をどう評価されますか?

ターゲットを若年層から富裕層やお金に余裕のある大人に変えた。でもそれによって長年のファンが離れてしまった現実もあると思うんです。そもそもディズニーって、子ども向けの映画をたくさん作っていて、多くの子どもたちのファンを抱えていたわけで。

行きづらくなった人が苦言を呈したい気持ちもわかるんですよ。ただ企業としてターゲットを再設定し、そのターゲットに喜んでもらうためのアクションプランを実行し、結果として高収益を得る。これは経営戦略として非常に正しい姿だと思います。

確かになぁ。そういえばUSJには、昔から行列に並ばず優先的にアトラクションに乗れる高額なパスがありましたよね。「テーマパークでそんなことをしていいんだろうか」と衝撃を受けながらも、使ってみたらすごく快適だった覚えがあります(笑)。

わかります(笑)。以前、とてもお世話になっているご家族に、USJの特別なガイドツアーが付いたプレミアムなパスをプレゼントしたことがあるんです。目玉が飛び出るくらいの金額でしたけど、ものすごく喜んでいただいて。

そうそう(笑)。まさにお金で時間を買う、世の中の縮図ですよね。お金がない人は時間で、お金がある人はお金で解決するという。ともあれ、夢の国に来てまでそんな現実を目の当たりにするのは、なかなかつらいものがある気もしますが(笑)

まぁ、どんな娯楽施設でも同じですからね。野球場ならグラウンドに一番近い席が最も高いですし、アーティストのライブでも、いい場所は高い価格が設定されている。テーマパークがそういう方向に進むのは、事業としてごく自然なことだと思います。

確かに。ディズニーも、食事やお土産を含めると一人2万円近くかかりますからね。家族で泊まりがけで行けば、10万円なんてあっという間に超えてしまう。その金額を支払える人が「お客様」なんだと、経営トップが明確に決めたわけですね。

ええ。インバウンド客に対しても同じように、その価格を支払える、質の高いお客様だけをターゲットにしているということだと思います。今後はあらゆるサービス業で、こうした二極化はさらに進んでいくんでしょうね。お寿司屋さん然り、焼肉屋さん然り、ホテルもそうです。

本当にそうですよね。ちなみに万代さんでは高価格帯のサービスは作らないんですか? プレミアムチケットみたいな。

プレミアムパスというサービスはありますが、月額400円ですからね(笑)。むしろ日頃ご利用いただいているお客様にもっとお得に楽しんでもらいたいというもので。
対談している二人
倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表
株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。


















