第140回 アンケートでは見えない「お客様の本音」の見つけ方

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第140回 アンケートでは見えない「お客様の本音」の見つけ方

安田

Xで書かれていた「数字と直感の比率を50%ずつくらいで見ている」というお話について、もう少し詳しくお聞きしたいなと。経営において数字は当然大事だけれど、現場で感じる直感や違和感も、同じくらい大事にされているということですよね。


倉橋

そうですね。数字はもちろん追いかけますが、現場にしかない空気感というものがありますから。例えば僕たちのような店舗ビジネスでは、「駐車場」が最初にお客様へ提供できるサービス空間なんですよ。

安田

ほう、なるほど。確かに車で来店されるお客様にとっては、そこが入り口になりますね。


倉橋

ええ。車を停める枠の線が1本か2本かのような細かい部分でも、お客様が感じる心理的なストレスが全然違うんです。隣の車に寄せられすぎると停めにくくなりますし、ドアを開けるときも気を遣う。

安田

ははぁ、言われてみれば確かにそうです。何度も切り返しが必要だったりすると、お店に入る前から疲れてしまいますもんね。「もうあそこには行きたくない」と思ってしまう原因になりかねない。


倉橋

そうなんです。そこでの小さな不満が積み重なって、最終的なお店の評価につながっていきますから。あとは意外と見落としがちなのが、照明の問題です。季節の変わり目で日が落ちる時間が変わるのに、点灯時間や明るさがうまく調整できていないとか。

安田

ああ、確かに。暗い駐車場だと、それだけで不安になったり、お店の印象が悪く見えそうです。


倉橋

そうそう。駐車場の管理の甘さから、その店の経営状況が見えてしまうこともよくあります。お客様がどういう期待感を持って店舗に来るか、すでに駐車場から商売は始まっているんです。

安田

なるほどなぁ。でもそういう期待感って、数字には表れにくいですよね。だからこそ倉橋さんは直感で見ていると。


倉橋

仰るとおりです。お客様が得られるベネフィットには「機能的なもの」と「情緒的なもの」があるんですが、前者は数字で測りやすい一方、後者はそれができないのですごく難しい。どう加点ポイントを作るのか、結局のところ直感が頼りなんですよ。

安田

確かに。お客さんにアンケートをお願いしても、本音を書いてくれることは少ないでしょうしね。


倉橋

そうなんです。アンケートを熱心に書いてくださるのは、元々高得点をつけてくれている方か、ごく特定の方だけですから。本来一番聞きたい層の意見は、待っていても出てきません。

安田

だからこそ、倉橋さんご自身が実際に万代さんの各店舗に足を運んで、駐車場から店舗に入るまでの空気感やお客様のリアルな様子を見に行かれているわけですね。

倉橋

そういうことです。店舗ごとに自分でも車を停めて確認します。その時もなるべく一番遠いところに停めて、お客様がどういうふうに歩いて来られるのかも観察します。お店から出てきた方の表情を見るのも大事です。

安田

へぇ、帰る時の表情を見るんですね。楽しんでもらえたのか、それとも何か不満を感じているのか。ただ歩いている姿からだけでも感情の動きは読み取れるものなんでしょうか?

倉橋

表情や歩くスピードでだいたいわかりますね。満足している方はやはり表情が明るいです。ストーカーみたいで怒られそうですけど、たまにお客様の会話に聞き耳を立てていることもあるんです(笑)。

安田

笑。でもアンケートを取るような定番の調査手法よりも、ご自身の直感や違和感を信じて現場を徹底的に観察する方が、経営者として得られる情報や気づきはずっと大きいということなんですね。

倉橋

そうそう。よりたくさんの情報を得られるよう、一番お客様が集中する時間、例えば日曜の午後3時頃を狙って行くようにしています。駐車場からの動線や、お客様が店内でどう遊んでいただいているか、自分の目でずっと定点観測しているんです。

安田

実際に自分でも遠い場所に停めて歩いてみて、「ここは停めづらい」「ここの照明が暗い」と気づいたら、その都度改善するわけですね。

倉橋

ええ。その場で店舗の責任者に伝えます。現場の不満をいかに早く見つけて、不満の芽を摘んでいくかが勝負ですから。

安田

いやぁ、スピード感がすごいですね。

倉橋

単純に、お客様がお店に入って最初にどこへ向かうか、どのアクションを起こすのか観察するのが好きなんです。

安田

さすが繁盛店研究家ですね。私も昔「会社に来ていただく仕組み」を考えていたことがありましたけど、会社に入る手前のことまでは想像してませんでしたね。今お話を聞いていて、あの頃もっと観察しておけばよかったなと。

倉橋

たくさんある選択肢の中から、万代を選んで来ていただけているわけですからね。駐車場の時点でがっかりさせてしまったら、リピートしてもらえなくなってしまう。とはいえ難しいのは、ポジティブな報告は現場からいくらでも上がってきますが、ネガティブな報告はなかなか上がりづらいことで。

安田

確かに、現場はネガティブな報告を上げたくないですもんね。だからこそ自分で見に行くと。

倉橋

ええ。それに潜在的に感じている減点ポイントは、お客様自身も明確に言語化できていないことも多いんです。

安田

ああ、そうか。まだ顕在化していない「なんかちょっと嫌だな」みたいな段階で見つけないといけないわけですね。実店舗を経営している会社の経営者は皆やってるんですかね。ユニクロの柳井さんとか。

倉橋

やっていると思いますよ。経営者がそこに興味を持てないと、お店は絶対によくなっていきませんから。

 


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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